近代美術館「鎌倉館」31日が最後の展示 65年の歴史に幕、ファンら殺到
65年の歴史と日本初の公立美術館として知られる神奈川県立近代美術館「鎌倉館」(鎌倉市)が今年度末で閉館することになり、1月31日までの最後の作品展示に平常の10倍もの入館者が殺到しました。戦後、多くの関係者の協力で発足した同館は歴史の街・鎌倉の心のよりどころでもあったため、美術ファンや市民が閉館を惜しんでいます。
坂倉準三氏が設計、建物は保存へ
鎌倉館は鶴岡八幡宮の敷地内にあるユニークな立地でも知られ、同県葉山町の「葉山館」と鎌倉市内の別の場所にある「鎌倉別館」とともに3美術館が神奈川県立近代美術館(水沢勉館長)を構成しています。近代美術館は「日本近代美術を中心に西欧や近代中国の版画などを含め国内の公立美術館では有数の質と量を誇る」とし、今回鎌倉館で展示の作品も高村光太郎の「上高地風景」、佐伯祐三「パストゥールのガード」、古賀春江「サーカスの景」、オーギュスト・ロダン「花子のマスク」など多彩です。 水沢館長が同館のホームページなどで明らかにした経緯によると、敗戦後の日本、まだ連合軍の占領下の1949(昭和24)年、神奈川県内の美術家や研究者、知事らが「文化の復興」を目的に美術館の建設を目指して「神奈川県美術家懇談会」を設立。1951(昭和26)年11月に近代美術館(現鎌倉館)の開館にこぎつけました。
建物は20世紀建築の巨匠であるル・コルビュジエに師事したモダニズム建築の建築家・坂倉準三氏の設計で、その斬新な印象は敗戦で打ちひしがれた市民らの大きな期待を集めました。また、鎌倉館はファンや市民から「鎌倉近美(きんび)」「カマキン」などの愛称で親しまれてきました。 閉館は、建物の老朽化や耐震性の問題とされ、神奈川県は「国史跡に指定された鶴岡八幡宮の境内においては現状変更を伴う改修は困難」として閉館に至ったとしています。 ただ、近代建築として美術館の建物の評価が高いことなどから、建物は保存の方向です。