『虎に翼』で注目!ハ・ヨンスの「自分と重なる”ヒャンちゃん”に込めた思い」とは
連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合ほか)でのみずみずしい演技が注目されているハ・ヨンスさんがBAILAに1年ぶりに登場。韓国ではすでに人気俳優として活動していた彼女は、日本での活動にどんな思いを抱いているのでしょうか。ドラマ撮影中のエピソードや手応え、今後の日本活動における意気込みなど、本音トークで盛り上がりました。 朝ドラ注目俳優 ハ・ヨンスさんの写真をもっと見る 【ハ・ヨンス】 1990年10月10日生まれ。韓国 釜山出身。B型。韓国で多数のドラマ・映画の主演を務めたトップ俳優の一人。現在は日本に活動の場を移し、俳優、バラエティ番組出演、モデルなど多岐にわたって活躍中。現在はNHK連続テレビ小説『虎に翼』に出演中。
■朝ドラを通して私を知ってくださる方が増えたことがすごく嬉しい ――本日のBAILAの撮影はいかがでしたか? 色々なバリエーションのメイクをしていただいて本当に楽しかったです。ドラマの役柄ではメガネをかけていることも多いので、いつもと違う自分に一人で盛り上がってしまいました(笑)。 ――大変話題の作品、NHK連続テレビ小説『虎に翼』では朝鮮半島からの留学生・崔香淑役を熱演されていますが、反響や手応えなどはいかがですか? 朝ドラに出始めてからInstagramのフォロワーがめちゃめちゃ増えたし、応援コメントもたくさんいただいてすごく嬉しいです。電車に乗っているとき、周りの方に二度見されることが最近よくあるんですけど、“もしかして、私のことを知ってくださっているのかな?”なんて思って嬉しくなっちゃいます。 ――日本へいらしてから2年半、日本で俳優業を本格的にスタートさせて1年半とのことですが、注目されている作品への出演、しかも日本語での演技ということにプレッシャーや緊張はありますか? すごくあります。ドラマの中での初めての台詞が、「また明日」だったんですけど、たった一言なのにすごく緊張してしまって、このアクセント、イントネーション、合ってる?って、何度も何度も確認しました。あのときのドキドキ感は忘れられません。 撮影前は毎回必ず、台詞を一人で喋って録音して、それがちゃんとした日本語に聞こえるか確認するようにしています。視聴者の皆さんの反応をいつも気にしているのですが、中には、「日本人かと思った」っていうようなコメントもあって、自然な日本語の発音ができているならよかったって、ちょっと安心したり。 ■やるべきと思ったらやらないと病気になっちゃうタイプ ――韓国でキャリアを築きながらも、日本へ渡って俳優活動をするという目標を叶える、そのバイタリティが本当に凄いです。 役者ってみんな、いつもその次、その次の次、っていう感じで、ぐいぐい行きたい人が多いと思います。私もそっち系だから、今度はこんな役を演じてみたい、とか、色々と考えていることはありますし、日本で実現していきたい。欲望の塊なんです(笑)。 ――伊藤沙莉さん演じるドラマの主役の寅子(ともこ、通称トラコ)も自分の意思でガンガン突き進むタイプですけど、ヨンスさんご自身はいかがですか? はい、私も突き進むタイプだと思います。やるべき!と思ったら、やらないと病気になっちゃう。やらずに後悔したくないんです。やろうと決めたらとことん取り組む。日本語を勉強することもそうで、毎日一人で6時間くらい勉強して、やっとここまで喋れるようになりました。 ■留学生の香淑という役は自分とリンクすると思った ――ご自身初となる日本のドラマ出演ということで、出演が決まったときの気持ちは? 正直、私でいいの!?という感じでした。出演が決まる前にプロデューサーとお会いして面談をしたとき、私自身の考えていること、韓国のこと、色々なお話をしました。 『虎に翼』はジェンダー、女性の人権、差別など、現在の社会のとっても難しい問題に深く切り込んでいくストーリー。そんな大きな作品の一部になれて嬉しいです。韓国にいる母もすごく応援してくれているんですけど、韓国での放送は韓国語字幕がついていなんです。だから、「うちの娘がなにかやってるな」くらいの感じだとは思いますが(笑)。 ――香淑役への思いや役作りなど聞かせてください。 香淑は自分とすごくリンクしていると思ったんです。自分の国ではないところに住んでいることも、食いしん坊なところも。だから、基本的には作り込まなくてもいいかなと思いました。 私は視力があまりよくないんですけど、普段はメガネをかけないんですよ。でも、香淑はメガネが“鎧”みたいなところもあったり、お兄さんといっしょにいるときはヤンバン座り(あぐら)をしてリラックスしていたり、そういった目に見える部分での違いは意識していました。あとは戦後のお話なので体を絞ったり。日本語でお芝居することの大変さもありますが、すごく思いを込めて崔香淑という役を演じているので、それがきちんと視聴者の方々に伝わっているといいなと思っています。 日本語に関しては香淑は私より長く日本語を学んだ設定で、私では全然追いつかないくらいハイレベル。だから舌をかみながら毎日毎日頑張って、台詞だけはネイティブに近いレベルを目指しました。おかげで私自身の日本語も上達して、現場でみんなで話していても90%くらいは理解できるようになりました。 ――今回の役を演じるにあたって難しかったところは? “金平糖”っていう言葉がうまく言えなくて、どうしようって。“金平糖”みたいなアクセントは韓国に存在しないからどうしてもできなかったんですけど、練習してなんとかなりそうっていうレベルになったときにその台詞自体がカットされて、ホッとしました(笑)。そんな感じで慣れていない言葉、使ったことのない言葉が出てくるとビビってしまうんですけど、それを乗り越えていくのも楽しいです。 ――主演の伊藤沙莉さんとのエピソードはありますか? 現場で私はいつも勉強になっています。沙莉さんの泣く演技とか、本当に素晴らしいんです。どうしたらあんな演技ができるんだろうって驚きました。演技への入り込み方が凄くて、もう言葉にならない。尊敬しています。 ――ほかの共演者との思い出やエピソード、心に残ったことを教えてください。 私とそんなにシーンはかぶっていないんですけど、稲垣雄二役の(松川)尚瑠輝くんと、小橋浩之役の(名村)辰くんと三人でお酒を飲みに行きました。そこで私はレモンサワーを10杯。韓国人だからお酒強いんですよ~(笑)。 ――ドラマのテーマでもある「女性の解放」といった部分に共感するところはありますか? すごくあります。私が育った釜山は「男性はこう、女性はこう」っていう考え方が強いんです。たとえば家族内でも、男性が座る場所と私やおばあさんが座る場所がきっちり分かれて決まっていたり。こどもの日にはお兄さんはインラインスケートをもらったけど、私は小さい手帳で。お兄さんと同じように、もっと大きいものをくださいって思いました(笑)。お兄さんは長男だから、うちを支えてくれる人っていう家族みんなの期待を背負っていたので、私だってできるぞ!っていう思いもあって、今こうして頑張れているのかもしれません。 ■休みの日は一人でいたい派だけど、誘われると嬉しくなっちゃう ――少しプライベートなお話も。お休みの日はどうされていますか? 飼っているうさぎのマヨちゃんと一緒におうちでゆっくりすることが多いです。最近は家で映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を観ました。鬼太郎が大好きなんです。自分から誘うのが苦手なのでひとりで過ごすことが多いんですけど、たまにお誘いを受けると私でいいの?って嬉しくなっちゃう。それくらい、普段はあまり家から出ません(笑)。 ――ドラマでよく「はて?」「スン」といったシーンが出てきますが、ヨンスさんは日常でそういった瞬間はありますか? ありますね~。たとえばグループLINEで女子会しようっていう話になって、「行けたら行く」と言われたとき。韓国人の感覚だとそれは、たぶん来るだろうととらえるんですけど、日本だとちょっと意味が違うみたい。またご飯に行こうね、という話になっても実際には行かないとか、遠慮する文化?って言うんですかね。 ――それでは最後に、今後の抱負をお願いします。 日本でもっともっと頑張りたいです。映像のお仕事に限らず色々やってみたいことはたくさんあります。歌うのは上手ではないかもしれないけど、ミュージカルだったり舞台作品もやってみたい。でも、日本語だとちょっと難しいなと思ったりも……。放送中の『虎に翼』はネタバレになってしまって言えないことも多いのですが(笑)、今後の香淑も楽しみに観ていただけたらと思います。 トップス¥10450・ピアス¥22000(セソワ)/ともにサージュブティック ワンピース¥8500/オルドット 撮影/岡本俊 ヘア&メイク/林由香里 スタイリスト/伊藤あかり 取材・文/通山奈津子 構成/渋谷香菜子