広島がマエケンをメジャーに送り出す理由
メジャーへの挑戦を表明
広島の前田健太投手が、10日、広島で契約更改交渉を行い、推定7000万円アップの2億8000万円でサインした。その交渉の席上、マエケンは、鈴木球団本部長に、来年オフのポスティングシステムによるメジャー移籍を希望した。 「あこがれがない、いきたくないと言えば嘘になる。野球人生は一度。一番いいときに挑戦したい。チームに恩返しできる形がベストだと思う。今季は、200イニングも投げられなかったし、そのためにも来季は最高の結果を残したい」 彼の言う“恩返し”とは、ポスティングによる移籍でチームに移籍金が転がり込むことを示唆している。彼が海外FA権を得るのは2017年だから、この3年以内の期限となる。もちろん球団サイドは、チームの大黒柱のメジャー行きにすぐには許可を下ろさなかったが、昨年オフの契約更改交渉時に続き、2年連続でメジャーへの移籍要望を出され、マエケンの意志を容認せざるを得なくなった。 しかも、同世代の楽天・田中将大投手が先にポスティングを利用してメジャー行きを決めそうな雲行き。1年長く広島のためにプレーするマエケンの気持ちにも答えてあげなければならないという方向に進んでいる。 新しいポスティングシステムの入札金額の上限が、これまでの無制限から20億円に変更されることは、広島にとって大きな誤算ではある。マエケンはWBCでメジャー球団のスカウトから高い評価を受けているため、従来のポスティングシステムならば、その年のFA市場とも関連してくるが、少なく見積もっても1.5倍から倍額は入札されただろう。 ■年俸3億円以上は払えない だが、広島には広島のお家の事情がある。 観客動員を含め、グッズ販売なども好調で、球団の売り上げは右肩上がりではあるが、他チームと違い、本社からの赤字補填がなく、独立採算で球団を回していかねばならない経営体質ゆえ、もはやマエケンの年俸が広島の支払える限界点に近づいているのだ。 ヤンキースとの巨額の契約を果たした黒田博樹を5年前に、FAでドジャースに放出した際も、当時の年俸が2億5000万円。広島が支払える年俸の上限の額は、2億から3億の間とされていて、それ以上のマネーゲームには参加しないというより参加できないのだ。マエケンが、来季、それなりの成績を残せば3億超えは確実になるだろう。今オフも10勝投手の大竹寛をFAでライバルの巨人に取られた。