ダカール初挑戦の夢は“海賊”にも止められない! ブラジル人コンビ、車両運ぶ貨物船が「フーシ派」による襲撃受けるも出走果たす
ダカールラリーは冒険だが、ロドリゴ・バレラとエニオ・ボッツァーノのふたりはスタートラインに立つ前から波乱に巻き込まれた。彼らが使用するカンナムUTVを載せた貨物船が海賊の襲撃を受けたのだ。 【動画】ダカール2024:ステージ2 ベスト・モーメント ブラジルの名門モータースポーツ一家のひとりであり、南米ラリーレイド王者でもあるバレラ。2024年のダカール初挑戦に向けて準備万端かと思われたが、クリスマスをブラジルの家で過ごしていた彼に、ダカールの舞台となるサウジアラビアへ向かう貨物船が紅海で海賊に襲撃されたという知らせが飛び込んだ。 貨物船への襲撃を行なったのは、イエメン北部を拠点とするイスラム教シーア派の一派、ザイド派の武装勢力「フーシ派」のメンバー。フーシ派は2012年にイエメンで始まった内戦の主要勢力のひとつで、イランによる支援が疑われている。またフーシ派はサウジアラビアやアメリカ、ハマスと戦闘を続けるイスラエルなどと敵対している。 また、フーシ派による貨物船襲撃は今回限りではない。2023年末、アメリカ政府は紅海地域を通る貨物船を保護するための多国籍部隊結成を発表。12月31日には、アメリカのヘリコプターが3隻の船舶と交戦し、乗組員10名が死亡している。 バレラとボッツァーノの車両を載せた貨物船は辛うじて海賊から逃げ切ることができたものの、当初の航路を迂回せざるを得ず、アフリカ大陸を周り、最終目的地に向かうこととなった。そのため、到着までの日数が20日ほど伸び、ふたりのダカール参加は実現不可能のように思われた。 しかしバレラとその家族はダカール初挑戦の夢を諦めず、代わりのマシンを探す時間との戦いをスタートした。その答えはポルトガルにあった。 「ブラジルに来て僕らと一緒にセルト・ラリーに参戦していたドライバーのカンナムをポルトガルで見つけたんだ」とバレラは言う。 「ただ、急いで改造とレギュレーション対応を行なう必要があった。幸い、それが上手くいってダカールの車検を通ることができた」 ただ、襲撃を受けた貨物船にはマシンだけでなくスペアパーツも積まれていたため、バレラとボッツァーノの困難は終わらなかった。 「まだ、沢山のメンテナンスが求められるダカール期間中に必要なパーツが全て揃っていない。そのためには、他チームの助けが必要だ。ダカールはレースと冒険のミックスだ。ダカールでの連帯感が最も注目されるのはそれが理由だ。できる限りみんなで助け合うんだ」 サウジアラビアに到着したバレラは、ダカールに参加するため、必要な機材を探すために奔走した。 「最後までこんな感じだろうね」とバレラは言う。 「アクシデントに見舞われる前の正しい計画だったら、レースで戦うのはかなり難しかっただろうね。でも、それがダカールなんだ。毎日、自分に打ち勝たなければいけない」 バレラとボッツァーノはスタート前からトラブルに見舞われたが、プロローグから驚くべきパフォーマンスを見せた。プロローグが行なわれた金曜日の終了時点で、ふたりは36台のUTVで構成されるT4カテゴリーの中で5番手につけた。 「全てが上手くいった」とバレラは言う。 「ここ10日間、チームが経験してきた全ての苦難を考えれば、この5番手は素晴らしい結果だ」 「みんなにおめでとうと言いたい。そして夜遅い時間まで作業してくれたこと、僕らはできると信じてくれたことに感謝したい」 なおバレラとボッツァーノは、土曜日のステージ1でクラス優勝。日曜日のステージ2でクラス9番手につけ、全体ではクラス2番手に浮上した。
Guilherme Longo