なすすべなく体が衰える希少難病、当事者が治療薬研究 希少タイプの筋ジストロフィー患者に希望を 所属の大学チーム、候補物質発見
病気は「顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー」 筋力低下抑える化合物発見
顔や肩、腕などを中心に筋肉が徐々に衰える難病「顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー」の治療薬開発を目指す信州大基盤研究支援センター(松本市)の吉沢隆浩助教(40)=実験動物学=らのチームが、培養細胞やマウスを用いた実験で筋力低下を抑える化合物を見つけた。治療薬の候補となり得る物質として国内で特許を出願。作用のメカニズムなど研究を重ねる。
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーは現在、根本的な治療法がない。体を支えて動かす「骨格筋」の細胞を死滅させるなど毒性をもたらす遺伝子「DUX4(ダックス・フォー)」の発現異常が原因とされ、DUX4を抑制する治療法が各国で研究中だ。
信州大基盤研究支援センター、研究促進へCF中
吉沢助教も顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの患者の1人。チームは基礎研究で、培養細胞に600種類以上の化合物を加えて実験を重ねた結果、DUX4による細胞死を抑える化合物を発見。この病気を発症させたマウスに投与し、体重の減少や、握力や筋持久力の低下を抑えられる効果を確認した。 国内の特許出願を3月末に済ませた。今後、国際特許出願を行うとともに、化合物の作用のメカニズムなどを明らかにし、安全性を検討したい考え。吉沢助教は「化合物を治療薬にしていくためには製薬企業の協力が欠かせない」としている。 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーは患者が少なく、薬剤開発の優先度が上がりにくいとされる。信大は研究を進めるため、2024年3月末までクラウドファンディング(CF)を実施中。目標額は250万円。吉沢助教は「治療薬のない病気に立ち向かう患者に光を届けたい」と話している。
「顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー」とは
筋肉が徐々に壊れ、運動機能障害が生じる遺伝性の病気。症状には個人差がある。顔面や上半身の筋力低下から始まって脚などに影響が及び、電動車椅子が必要になるケースもある。罹患(りかん)率は人口10万人当たり5人程度とされる。