国のスタートアップ資金支援に採択 鋸南のエビ養殖手掛ける企業
エビの陸上養殖を手掛ける鋸南町の企業「Seaside Consulting」(シーサイド・コンサルティング)が、政府のスタートアップを資金支援する制度「SBIR」に採択された。SBIRに採択されるのは公的研究機関や大学が多く、スタートアップ企業の採択は例が少ないという。 SBIRは、スタートアップ企業などが取り組む研究開発を後押しして、国内の技術開発を進めることを目的にしている。今回採択されたのは、低いコストで養殖用の水槽内の水温を管理するシステムの研究。熱工学を応用して寒い地域でも温かい水を好む魚介類の養殖ができるように水温を管理。水を温めるのに太陽光発電を使って電力の消費量を抑え、水槽を置く建物にも間伐材を使うなど、自然環境に負荷をかけない配慮を施す。この技術で同社は現在、特許を出願している。 今回、SBIRに採択されたことで、同社は来年3月末までを事業期間として1500万円の助成を受ける。 今回の採択に向けて同社は、「ペロブスカイト太陽電池」を手掛ける「冨士色素」(本社・兵庫県川西市)、画像解析システムの技術を持つ「アクト・ノード」(同・相模原市)と共同で国に提案した。 資源エネルギー庁のホームページによると、ペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコンを使った太陽電池に対し、国内で調達しやすいヨウ素が原料。材料をフィルムなどに塗ったり印刷したりでき、折り曲げも可能。低コスト化が見込め、シリコンの太陽電池よりも軽くていろいろな場所に設置できるため、次世代型の太陽電池として期待されている。 今回、採択された研究では、鋸南町にある養殖施設に冨士色素の太陽電池を導入して電力をまかない、アクト・ノードの技術で各種のデータ解析を行う。コストのさらなる低減化など養殖技術への効果を確認し、実用化を目指す。将来的には、養殖する魚種を、現在のエビだけでなく、ウナギやフグ、冷たい海を好むウニなどにも広げたいとしている。 平野雄晟代表取締役(54)は「日本は水産物の半分を輸入に頼っている。自分たちが食べるものは自分たちで調達することを改めて考え直し、陸上での養殖技術を社会に普及させたい」と話している。