「メニューと実物がちがーう! 社長を呼べ!」「返金しろよ返金しろよ返金…」弁護士も怯む、強烈カスハラの恐ろし過ぎる実情【法律の現場から】
ケース(2)「記念日に間に合わなかったから」執拗な返金要求
ネットショッピング関係で多いのが「希望通りの日程までに商品が届かなかったから、返金してほしい」といった、配送日に関するトラブルです。 実際に私が担当した事件でも、「彼女の記念日のために買った商品が、記念日までに届かなかったので返金してほしい」という要望でした。 そもそも、配送日などはお約束できない旨、ホームページや配送ポリシー等にも記載しており、「それだけ大事な記念日なら、早く買っておけばいいじゃないか」と思うのが一般的な感覚ではないでしょうか。 このケースに関しては、半ば言いがかりといいましょうか、わかってやっているのではないかと思われたのが、謝罪より、とにかく「返金」を要求してきたことです。 カスタマーセンターの従業員や会社側が長時間拘束されたことで「これ以上対応しきれない」と弁護士側に要請が入りました。対応の結果、弁護士側にジャンジャン電話をかけてきて、弁護士が「話が堂々巡りしており、これ以上話すことはない」といって電話を切ると、今度は会社側に電話をかける…という、関係者一同が「これぞカスハラ…」と舌を巻く、まさに王道ともいえる「カスハラ行動」だったのでした。 本来なら、ここまでの対応であれば着信拒否を行い、(1)のケースと同様、威力業務妨害等に該当するよう警告を送るのが順当な対応方法だったのですが、問題になっている商品自体が1,000円前後と非常に低額で、返金処理すれば落ち着くという判断から、企業側も「損切り」するつもりで返金処理し、終結させました。 「少額だし、返金して謝罪すれば…」と思われるかもしれませんが、もしSNS等で、「あの店は文句をいえば返金してもらえる」などといった書き込みが出回れば、大変な問題に発展しかねません。 個々の対応が重要になるのは当然ではありますが、企業側も、クレーマーやカスハラ対応に費用や時間をかけるわけにはいきません。これらはビジネスにまつわる、非常に頭の痛い問題だと思われます。 (※守秘義務の関係上、実際の事例から変更している部分があります。) 山村 暢彦 山村法律事務所 代表弁護士
山村 暢彦