【高校野球】センバツ選出は「当確」の立場にある星稜 積み上げた練習の成果を発揮することが復興の光に
スポーツが頑張らないといけない
例年、冬場は学校敷地内に隣接する室内練習場での練習がメーンだが、今年は晴れていれば、学校から徒歩5分にある専用グラウンドが使える状態にあった。しかし、地震により、一部で地割れ。高台にあり、球場へ向かう坂道のアスファルトが亀裂や穴などの被害があった。金沢市、業者、学校の判断により、使用不可。再度、使えるメドは立っていない。 「三連休(1月6~8日)のどこかで、復興支援に行こうかと考えたんですが……。父の実家は能登。今は誰も住んでいないですが、見慣れた風景が一変してしまった……。幼いころはお盆の夏祭り、魚釣りなど、たくさんの思い出があります。居ても立ってもいられず。でも、交通網が大混乱しており、そういう状況でもない。(学校、自宅のある)金沢は能登ほどの被害ではないとはいえ、やらないといけないことは山積している。生徒の学びの時間を確保することが先決。タイミングが来たら、行動へ移していきたいと考えています」 1月11日。12月27日以来の練習で、野球部員は仲間と再会。「安心感。喜んでいるように見えました。彼らに会うまで何を言おうか考えていたんですが『とにかく、ウチができることを一生懸命やろう!!』と伝えました」。 再開から4日後、部内に新型コロナウイルスの感染者が出ると、15、16日は練習を中止。学校全体が感染拡大となり17、18日は部活動が休止、オンライン授業となった。自宅で過ごした山下監督は、あらためて地震と向き合った。 「日本航空石川さんが山梨に拠点を移して頑張っている姿を、ニュースを通じて見ました。また、14日に京都で行われた全国都道府県対抗女子駅伝では石川の1区を務められた五島莉乃さんが区間賞の快走で、感動しました。2011年の東日本大震災では、3月末の日本代表とJリーグ選抜による復興チャリティーマッチでカズ選手がゴール。さまざまな過去の映像も見返した中で、私自身『スポーツが頑張らないといかんな!!』と実感したんです」 1月26日、選抜選考委員会が控えている。 「野球部長(谷村誠一郎氏)とも相談したんですが、学校がOKであれば、取材対応をさせていただきたいと考えています。生徒たちが頑張ってきた『証し』として1月26日に、一つの結果が出る。石川県が頑張っているぞ!! というところを見せたいです。とにかく、一生懸命やる姿を見せるしかない。父が監督として率いていた時代から、ウチは我慢、我慢して、何とか乗り越えてきた歴史があります。『耐えて勝つ』という言葉が伝統として、先輩から後輩へとつながれていますが、今こそ、ウチのスタイルをやるしかない」 山下監督は野球部長時代から、いつも生徒に寄り添ってきた熱血漢だ。誰よりも故郷・石川に愛着があり、母校・星稜高を愛している。グラウンドでは常に泥んこになって、全力プレーを貫くのが、星稜野球の神髄。何も変えることはない。積み上げた練習の成果を発揮することが、復興の光になると信じている。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール