新興・途上国「グローバル・サウス」の影響力拡大、G20首脳会議で世界に印象づける…「対トランプ氏」では温度差
【リオデジャネイロ=大月美佳】19日に閉幕した主要20か国・地域(G20)首脳会議は、新興・途上国「グローバル・サウス」の影響力拡大を世界に印象づけた。首脳宣言では、貧困や気候変動対策のほか、超富裕層への課税強化などに初めて踏み込み、新興国側の要望の多くを反映させた。ただ、今後は米国のトランプ次期大統領との関係を巡り、結束が困難になる兆しもあった。
ブラジルが主要テーマに掲げたのは、飢餓・貧困対策と気候変動対策、国連安全保障理事会など国際機関改革の3項目。「世界人口の大多数が関心を寄せる視点をテーブルの上に並べた」。19日の閉幕式で演説したブラジルのルラ・ダシルバ大統領は胸を張った。
2022年のインドネシアから来年の議長国の南アフリカまで、G20は4年連続でグローバル・サウスが議長国を務め、議論を主導する。先進7か国(G7)などがリードする従来の姿から様変わりしてきた。
首脳宣言には、貧困・飢餓対策への資金拠出や途上国に先進国が支出する「気候資金」の増額、超富裕層への課税強化などが盛り込まれた。多くの新興国が要望していた内容で、国連安保理についてもグローバル・サウスの理事国枠拡大を求めた。グローバル・サウスが結束する背景には、植民地支配から続く米欧主導の国際秩序への不満がある。世界銀行によると、世界の約7億人が極度の貧困状態にある。
現地不在のトランプ氏の大統領就任を来年1月に控えることが影を落とし、結束に水を差す一幕もあった。アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は「飢餓や貧困の解決策は介入しないことだ」と述べ、トランプ氏に同調して超富裕層への課税強化に反対した。ブラジルの隣国から公然と異議が噴出する事態に、必ずしも一枚岩になり切れない実情が透ける。グローバル・サウスは、米欧と中露の間で中立の立場を示す国が多いが、トランプ氏を巡っては、ミレイ氏が信奉する一方、ルラ氏は米大統領選でハリス副大統領を応援するなど温度差がある。