虐待児の「一時保護」に司法関与の方針 現場の児相の声は?
「一時保護」の基準をクリアにしつつ、その判断には司法の関与を――。今年2月の神奈川・相模原市の中学生の自殺問題を受け、厚生労働省は虐待を受けた子どもを親から適切に一時保護する際のより具体的な基準づくりに着手する。さらに中長期的には、一時保護の判断を家庭裁判所に委ねる方針で、7月に検討会を設置して議論することを決めた。こうした国側の方針について東京、横浜、千葉の児童相談所で虐待児の保護に携わる現場担当者の声を聴いた。(フリー記者・本間誠也) 【動画】「親子の暮らし」か「子供の保護」か 対応難しい児童虐待 ――児童相談所インタビュー
◇ 「強制的な(児童相談所の)職権保護をどの段階ですべきだったか。明確な基準を設けていきたい」「厚労省は(相模原市から)提出される報告書をもとに、新たな基準をつくる方針」。相模原市で発覚した虐待による男子中学生の自殺問題を受け、今年3月下旬に同市児相を視察した厚労省の渡嘉敷奈緒美副大臣は報道陣にそう述べた。
親が反対した場合の判断基準は明記されず
男子中学生の自殺問題を振り返ると、この生徒は2013年秋の小学6年当時から「家が怖い」と相模原市側に保護を求めていた。市児相や市中央こども家庭相談課によると、小学校からも虐待通告があったため、市児相は学校などを通じて当初は対応していたという。翌14年6月には生徒が「親に暴行された」とコンビニに駆け込み、警察に保護されたことから、市児相はこれ以降、親と生徒に対して面談指導を続けていたとされる。 児相は同年10月に親に一時保護を提案したものの同意を得られなかったため、生徒の要望に応えることなく職権による保護には踏み切らなかった。同月末には父親から投げ飛ばされて生徒の腹部にあざがでているのを中学校が確認し、市児相に通報したにもかかわらず、担当者は上司への報告を怠り、生徒への聞き取りも行っていなかったという。 そうした中、生徒は翌11月に親せき宅で自殺を図り、今年2月に容態が悪化して死亡。自殺問題が表面化した今年3月、市児相は記者会見で「私たちが関わってから(親子関係に)改善がみられたので、職権保護するべき急迫した状況ではなかった。対応は間違っていなかった」と説明した。 厚労省は一時保護すべきか否かに関する基準として、「子ども虐待対応の手引き」を示し、職権保護に向けての判断マニュアルともいえるフローチャートも公表している。ただ、「手引き」やフローチャートには親が一時保護に反対した際などの判断基準は明記されておらず、最終的にはケース・バイ・ケースで各児相に委ねられている。