TikTokのフォロワーは190万超! "日本一バズる動物園"「長崎バイオパーク」のSNS戦略
――いろいろな映像を撮られてきたかと思いますが、最近はこんな内容のコンテンツが当たりやすい、などはありますか? 神近 最近は「お世話をする動画」がヒットする傾向にあります。犬やモルモットをシャンプーしたり、新人飼育員に密着したり。お世話をしているシーンって、飼育員じゃないと見ることができないので、皆さん気になるんじゃないですかね。実際に飼育員になりたい方も見てくださっているようで。 バイオパークのYouTubeをよくご覧いただいている年齢層って、30?40代くらいがメインなんですけど、新人飼育員の密着動画は10代から20代前半の若い層の方に多く観ていただけました。「お世話をする動画」に関しても、飼育員の仕事に興味があるような若い人たちが観にきてくれている印象は受けますね。 ――飼育員さんの動画を観て「バイオパークで働きたいです!」っていう人もいらっしゃるんじゃないですか? 神近 いますね。実際に就職した子もいます。飼育員になりたいっていう選択肢の中で、「たまたま募集が出てたからバイオパークを受けます」っていう方は前にもいたんですけど、最近は「バイオパークで働きたいんです!」っていう声がかなり増えてきた印象です。 YouTubeやSNSを通してバイオパークの認知度が上がったこともありますし、動画に登場する飼育員を観て「こうなりたい」って思ってくれている方もいらっしゃるんだと思います。 ――動画に出演されている飼育員さんを園内で見かけると、ちょっと嬉しいですよね。 神近 お客さまも特別感を感じて来てくださっているんじゃないでしょうか。今までは飼育員が動物の説明をしていてもそこまで興味を持ってもらえなかった。今は動画でよく観る"知っている人"(飼育員)が説明してくれるからって、みんな真剣に話を聞いてくれるんですよ。でも春岡くんなんて、お客様から声をかけられ過ぎて、撮影に出たら中々帰ってこられないですもんね(笑)。 ■動物たちと一緒に自然の中に暮らしているような感覚 ――YouTubeやSNSのいい効果が出ていますね。改めて、バイオパークの強みって何でしょう。 神近 "自由さ"ですね。動物とお客さんとの境目があまりないので、動物たちは気が向けば人のすぐ近くに寄ってくる。カピバラなんて、その辺でゴロゴロ寝ていますし。放し飼いのキツネザルは、ご飯が欲しいときだけ森の中から出てきて餌をねだる。 本当に自由なんですよ。バイオパークに一歩足を踏み入れれば、動物たちと一緒に自然の中に暮らしているような感覚を味わえるのが強みですね。 ――最後に、パークとしての今後の目標をお聞かせください。 神近 バイオパークとしては、今の方向性をより極めていくことが大切だと思っています。昨年、ビーバーが園外でお散歩を始めて、エンリッチメント大賞(※)をいただきました。動物たちに自由があるから、自然な行動や習性を引き出せる。ここでは、そんな動物たちの姿を見ることができることをもっともっと知ってもらいたいですし、広めていきたい。 バイオパークらしい手法は、展示場の柵をなるべくなくしたり、外に出したり、放し飼いにしたりという形だと思うので、より自由な環境で動物の魅力を引き出していくことを極めていきたいですね。 春岡 僕はもっともっとオンラインを極めていきたいですね。もちろん現地に来ていただけることが一番嬉しいんですけど、なかなか来園できない方も多い。そういった方たちにもSNSやYouTubeを通して、バイオパークを知ってもらってたくさん関わってもらいたいなって思っています。動物好きには絶対に見てもらいたいので、今後も愛らしい動物たちの姿を発信していきたいです! ※ エンリッチメント(動物の福祉と健康を改善するために、飼育環境に対して行われる工夫)に取り組む動物園や飼育担当者を応援すると同時に、来園者である市民がエンリッチメントを正しく理解・評価することにより、市民と動物園をつなぎ、市民の動物園に対する意識を高めることを目指し、2002年より実施されている。 取材・文/山本真由 撮影/MOMOMI