『光る君へ』厳しい前評判から一変、非凡なドラマ作りに成功 画面注視データを総括
1000年前の人々に親近感が持てる設定
テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、2024年に放送されたNHK大河ドラマ『光る君へ』の視聴質分析をまとめた。 【ランキング】『光る君へ』放送回別注目度トップ10
■少ない記録を逆手に取った大胆かつ繊細なストーリー展開 好評のうちに幕を閉じた『光る君へ』だが、その前評判は非常に厳しいものだった。「戦がない」「時代がマイナー」「紫式部と藤原道長以外に有名な登場人物がいない」「登場人物の名字が藤原だらけで見分けがつかない」など、大河ドラマとして明らかに不利な要素が多くあり、平和な平安時代を舞台に繰り広げられるであろう貴族たちの恋愛模様に、全く興味がもてないなどと散々に言われていた。 だが、第1回「約束の月」のラストシーンで、主人公・まひろ(紫式部)の母親が、道長の兄に刺し殺されるというショッキングな展開で評価は一変。回を重ねるごとに大きな反響を呼び、オンエアの時間帯は、X(Twitter)で関連ワードが毎週トレンド入りする人気ぶり。視聴率こそ振るわなかったものの、NHKプラスでの視聴者数も鑑みると十分な支持を得た大河であったといえるだろう。 そんな『光る君へ』の魅力は数多くあるが、大石静氏による秀逸な脚本と、個性豊かな登場人物にあることは間違いない。今より1000年前の古い時代ということで、残っている記録や著名な登場人物が少ないことを逆手にとり、大胆かつ繊細なストーリー展開と思い切ったキャラクター設定により、非凡なドラマ作りに成功した。 また、「出演者がみんな平安貴族っぽい薄い顔」だと思えば「ありえないほど真っ黒な大納言」が混じっていたりして、キャスティングが細部まで絶妙で話題性も十分だった。そして、視聴者がドラマに没頭できるかどうかは、視聴者自身が自分と登場人物の誰かを重ね合わせて感情移入ができることが重要なポイントとなる。普通に考えれば平安時代の超上級貴族を身近に感じることのできる現代人などほとんど存在しないが、『光る君へ』ではセリフが現代語に限りなく近かったり、登場人物が現代人と同じような言動をしたりと、今に生きる私たちが親近感を持てる設定に徹底したことも成功の要因といえるだろう。 筆者が個人的にすごいと感じたのは、全48回もの長丁場にもかかわらず、中だるみが一切なかったことだ。毎回何かインパクトのあるイベントや見どころが用意されており、毎週日曜日が本当に楽しみで仕方なかった。このような大河ドラマは初めてだと感じている。 さて、今回は総集編ということで、視聴者の注目度が高かった放送回の上位10回について、なぜこの回が注目されたのかを分析しながら、過去回を振り返っていきたい。