“若返り注射”でおでこが膨らみ「コブダイ」に!? 当事者「よくこれで生きてたな。額の限界を感じた…」 PRP+bFGFとは?
「取り出したものは、脂肪に似ていた。脂肪吸引で取った、黄色いウニウニしたような」 おでこを肥大化させていたものを取り除き、元の状態に戻すことはできたものの、注射代50万円と、治療のための2度の手術代250万円で、およそ300万円かかったという。 それでも、注射を打ったクリニックを訴えることはしなかったという。 「私はクリニックで同意書を書いている。思い通りになっていないといっても、施術としては『正しいことをやりましたよ』となってしまう。だから(300万円を)捨てたようなもの。自分の体も傷つけて、皮膚も傷つけて、いろんな神経も切って…」 切らずに手軽に受けられることから広く行われている「PRP+bFGF注射」だが、慎重な姿勢を示している医師もいる。
神戸大学病院形成外科・美容外科客員教授の原岡剛一氏は「安全な手法の開発に注力している医師はいるものの、その手法に広く合意は得られていない」と話す。 「現時点では、私は実施するつもりはない。この合併症の起こる機序、どうしてそういうような合併症が起こってしまうのか、その合併症がもし起こってしまった時どのような治療法があるのかがまだ確立されていないのでは。異常な増殖を引き起こした場合、それをコントロールする方法は少なくとも私の知る範囲ではない」 合併症が起きたとしても、注入したbFGFだけを取り除くことはできない。ステロイド注射で鎮静化させることも考えられるが、最終的にはしこりなど組織ごと外科的に切除するしかないという。 一方で、施術を行っている複数のクリニックのHPには、「(PRP+bFGFの)厚生労働省認可施設」「国に届出した再生医療」などの記載がある。
一見、「国が認めた治療法」にも思えるが、再生医療の法制度に詳しい国立がん研究センター生命倫理部長の一家綱邦氏は「法律に基づいて実施されているという再生医療であっても、国が安全性や有効性を保証する仕組みにはなっていない」と警鐘を鳴らす。 再生医療を行う場合、国が認定した再生医療の委員会の審査を受けた計画を国に届け出る義務がある。しかし、審査では使用される材料の安全性は検討されるものの、施術の有効性までを保証するわけではないという。 保険外診療の再生医療の中でも、有効性まで厳しい審査を経ているものもあるが、自分が受けるものについてどのような審査が行われたかについては、委員会の構成員や審議内容を自身で確認する必要がある。 国への届け出は、もともと再生医療の実態を把握するために始まった制度であった。だが、一家氏はその実態について「現在は『法律に基づいて行われている」という、その形式的な事実だけが一人歩きして、宣伝材料、患者さんの安心材料に使われてしまっているようにも思う」と指摘する。