2023年の「不適切会計」開示は過去 2番目 2年連続増の 60社・62件、最多社数はサービス業
市場別 「東証プライム」が30社で最多
市場別では、「東証プライム」が30社(構成比50.0%)で最も多かった。次いで、「東証スタンダード」が20社(同33.3%)、「東証グロース」が9社(同15.0%)と続く。 2013年までは新興市場が目立ったが、2015年以降は国内外に子会社や関連会社を多く展開する旧東証1部が増加。2023年も「東証プライム」が最多だった。
産業別 最多はサービス業の15社
産業別では、「サービス業」の15社(構成比25.0%)が最も多かった。サービス業は、従業員の不適切取引などによる「着服横領」や連結子会社での過大請求などの「誤り」が増えた。 次いで「製造業」の10社(同16.6%)。いずれも国内外の子会社、関連会社による製造や販売管理の体制不備に起因するものが多かった。 ◇ ◇ ◇ 衣料品卸の(株)プロルート丸光(東証スタンダード)は2023年7月18日、雇用調整助成金の不正受給に関する第三者調査委員会の調査報告書を開示した。2021年3月期から2023年3月期第3四半期までの決算短信等で、上場規則に違反して虚偽と認められる開示を行い、2021年3月期の各段階利益の赤字を黒字と偽っていたことなどが判明した。2023年9月、東証は同社に対し改善報告書の徴求及び公表措置を行った。これ以降、プロルート丸光の経営は一段と悪化し、同年12月5日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。 2023年10月、中小監査法人の双研日栄監査法人、青南監査法人、名古屋監査法人が合併し、ふじみ監査法人(東京都中央区)が設立された。また同年12月、四大監査法人の一角のPwCあらた監査法人とPwC京都監査法人が合併、PwC Japan有限責任監査法人(千代田区)が誕生した。 監査を請け負う顧客1社への報酬依存度が15%を超える状態が5年続くと、翌年からその企業の監査を担当できなくなるルールが2023年5月に導入された。監査業界の再編が進む中、不適切会計を起こさせないため、監査法人の監査機能がどこまで高まるか注目される。 コロナ禍が落ち着き、企業活動が回復するなか、2023年では60社、62件の不適切会計が判明した。不適切会計を根絶できない背景には、業績優先の意識やステークホルダーに対する情報隠蔽など、様々な要因がある。また、不適切会計が判明後の経営陣の対応が不十分なケースもあり、再発防止の仕組みづくりは容易ではない。上場企業は、改めてコンプライアンス(法令遵守)やコーポレートガバナンス(企業統治)の原点を見つめることが必要だろう。