『海に眠るダイヤモンド』は“格差社会”をどう描く? 端島の圧倒的なビジュアルから考える
端島の地図をイメージできている時点で『海に眠るダイヤモンド』は成功?
チーフ演出の塚原は、「現在の端島では廃墟の撮影しかできないので、本作ではCG技術を駆使して再現しています。空撮の画角で端島を再現するときには、セットの一部を映像として貼り付けるようなかたち。島を15個ほどのピースに分けて、『レゴブロック』のようなイメージで円形の島にはめ込んで、それと現代の端島をドローン撮影して全景として見せています」と語っている。 そして「現存の端島の寸尺に合わせてCGを先に作って、現場でその角度に合わせて撮影するという方法に挑戦」することで、手間のかかるCGを使用しながらも、リーズナブル&スピーディーな進行となる撮影を目指したという。(※) この試みは見事に成功しており、CGを用いた派手な映像が次々と展開されている。 筆者は頭の中で地図がイメージできることが、魅力的なドラマの条件だと考えている。 地図とは劇中に登場する建物の位置関係のことで、家、職場、お店といった建物の場所を自然に把握できるということは、それだけ主人公を取り巻く世界の解像度が高いということだ。 野木亜紀子の脚本は、空間の見せ方が実に上手く、例えば、沖縄を舞台にした『連続ドラマW フェンス』(WOWOW)では、米軍基地のある街としての沖縄の見せ方が見事だった。『海に眠るダイヤモンド』の端島も、塚原あゆ子のこだわりのある映像が相乗効果となって、島の中を登場人物と共に自由に散歩しているような楽しさがある。物語はまだ導入部だが、端島の地図を視聴者がイメージできている時点で、本作の成功は約束されたと言って間違いないだろう。 参照 ※ https://mantan-web.jp/article/20241106dog00m200020000c.html
成馬零一