映画「十一人の賊軍」で山田孝之と仲野太賀が魅せる覚悟をキメた人間の生き様
罪人たちの戦いの行末は? “人間”を浮き彫りにする覚悟の物語
東映の意欲作であること、そしてキャストやスタッフから、どうしても巨大な戦場における大スペクタクルな作品を想像してしまう。 しかし、本作は極めて“小さな”物語である。戊辰戦争全体で考えれば重要な局面ではあるのだが、ここで言っているのはそういうことではない。 筆者は、その小ささこそが本作のキーポイントだと思う。まずは舞台。激しいアクションや目を見張る殺陣もあるが、戦いが巻き起こるのはあくまで小さな砦だ。また、城下での知略戦も室内やお白洲で繰り広げられる。数百人規模の大激突!などという描写はまったくない。だがそれこそが、人間の覚悟を描く「十一人の賊軍」の魅力なのだ。 ●爺っつぁん(本山力)の刀捌きは、美しく強い。 そして、さまざまな立場の、さまざまな人間の思惑が錯綜して物語が進行していくのだが、いずれも規模は異なれど「自分の世界を守る」ことに終始している。 それを際立たせるために、主要キャラクターのドメスティックでパーソナルな問題を粒立てて描写していると思う。 たとえば政は、新発田藩士に襲われた妻の復讐をして罪人となった。賊軍となって以降も、故郷に残した妻と再会するためだけに行動する。その目的のためには裏切るし、逃げもする(本当にすぐ逃げる)。 これらの“小ささ”が、政、鷲尾兵士郎(仲野太賀)、溝口ほか登場人物の人間性と葛藤、そして覚悟を浮き彫りにしていた。だからこそ、賊軍と新発田藩のいく末から目が離せなくなる。 ●自分の世界を守るためなら狂気にも走る溝口。その覚悟たるや恐ろしい。 ●ぶつかり合う賊軍の政と決死隊の鷲尾。賊軍内はもちろん、決死隊内も一枚岩ではない。 本作は、慌てふためいて走る政の足元からはじまる。惨めにも映るその姿を、映画のラストまで覚えておいてほしい。戦いの末、賊軍たちが向かう先とは? “人間”の覚悟の物語。『十一人の賊軍』は一見の価値ありだ。
<作品情報>
映画『十一人の賊軍』 公開日:2024年11月1日(金) 監督:⽩⽯和彌 脚本︓池上純哉 出演:⼭⽥孝之、仲野太賀、尾上右近、鞘師⾥保、佐久本宝、千原せいじ、岡⼭天⾳、松浦祐也、⼀ノ瀬颯、⼩柳亮太、本⼭⼒、野村周平、⽥中俊介、松尾諭、⾳尾琢真、柴崎楓雅、佐藤五郎、吉沢悠、駿河太郎、松⾓洋平、浅⾹航⼤、佐野和真、安藤ヒロキオ、佐野岳、ナダル、⽊⻯⿇⽣、⻑井恵⾥、⻄⽥尚美、⽟⽊宏、阿部サダヲ、ゆりやんレトリィバァ 原案:笠原和夫 (C)2024「⼗⼀⼈の賊軍」製作委員会 【公式サイト】 https://11zokugun.com 文/関口大起