【成田 凌さんインタビュー】本作を楽しみにやってきたので終わった瞬間は力が抜けるほどでした
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「本作を楽しみにやってきたので終わった瞬間は力が抜けるほどでした」──成田 凌さん おしゃれで格好よく都会的なイメージが強い成田凌さんですが、俳優としての力量はフィルモグラフィが示すとおり。作家性の強い監督らに次々起用されてきましたが、この『雨の中の慾情』もまたしかり。『岬の兄妹』で世界的に注目された片山慎三監督の、独創性が爆発した、数奇な大人の恋物語です。 「物語は思わぬほうへ行くし、とにかくいろんなことが起こる。それを一つ一つ理解しようとされる方もいれば、ただおもしろい!と感覚で楽しまれる方もいる。この作品はそのどちらの方にも観ていただきたいし、楽しんでいただけると思います。主人公・義男の頭の中を覗き見てほしいというか、官能的で過激な部分もありますが、とっても切ないラブストーリーです」 観終えて強烈な切なさに襲われ愕然とする、そんな本作にかける思いは、並々ならぬものだったようです。 「数年間ずっと本作を楽しみにしてやってきたので、撮影が終わった瞬間はすべての力が抜ける感覚でした。すぐ別の作品に入ったので自然と元に戻ったのですが、この作品を皆さんに観ていただく目的が果たされたら、今度はどんな感覚になるのか今から楽しみです」 本作で成田さんが演じるのは、売れない漫画家の義男。未亡人の福子に目も心も奪われますが、福子が愛したのは友人の伊守。そんな2人が自分の家に転がり込んでくるのさえ、義男は許してしまうのですが……。 「義男は心の奥まで優しい人。でも“ただの優しい人”にならないよう、観終えて“あいつ、なんか優しかったな”と残る程度を目指しました。それには無理せず背伸びせず、地に足がついた一歩一歩を、身体の中からちゃんと出てくる一言一言をと、当たり前のことを積み重ねました」 福子役の中村映里子さん、伊守役の森田剛さんの魅力も光ります。 「福子は雨にぬれたり汗をかくシーンが多いのですが、中村さんの佇まいや声質のよさでその色気がすごく爽やかなんです。森田さんはただそこにいらっしゃるだけで素晴らしくて、現場で話す機会があまりないままでも、すべてわかり合えている気分で演じられました」 いろんな解釈ができる、それが醍醐味の作品。いわば難役に成田さんはいつもどう向き合うのでしょうか。 「誰もがつかめる役にすることも可能でしょうが、それをしたくないというか。例えば僕が“5”と表現したら“5”で観てもらうことになる。でも“4.88”で留めておけば、その余白でもっとおもしろく観てもらえるかもしれない。気持ちは明確に持ちつつ、でも表現はフワっとしておきたいんです」 これまで名だたる監督に愛されてきた成田さんですが、ここ最近、その横顔に一段と大人びた深みを覗かせるようになりました。 「仕事を始めて10年。メンズノンノでモデルを始めた頃を思い出します。先日、当時の自分と同い年の美容師さんに“(見て育った)世代です!”と挨拶され、その言葉にくらいました(笑)。ここまで勢いでやってきて、少しずつ好みがハッキリし、自分で選択ができるようになると自然と責任感が湧いてくる。今はそれにも少し慣れてきた状態なのかな。でも、まだまだ30歳。ここからグッと伸びるため、何をすべきか考えています」