ディスレクシア、保健室登校、オーバーステイ 年齢も立場も違う定時制高校の学生たちが実験で「火星を作る」奇跡の物語(レビュー)
西加奈子氏『わたしに会いたい』(集英社)には、八人の主人公が登場する。学校で「最下層のブス」と言われる少女だったり、脱毛サロンに通うガールズバーの店員だったり、乳がんになったグラビアアイドルだったりと、個性も置かれた状況もさまざまである。誰一人、私に似ていないと思う。なのに、一篇一篇が「私のための物語」だと感じるのはなぜなのだろう。 私たちの体と心には、気がつかないうちにたくさんの呪縛がかけられている。いくつもの傷があるのに、痛みに気がつかないふりをしてしまう。著者は軽やかな文体で、そこから主人公と読者を解放しようとする。小説から放たれる強く明るいパワーに、全身が温められているような気持ちになった。 [レビュアー]高頭佐和子(書店員・丸善丸の内本店勤務) 協力:新潮社 新潮社 小説新潮 Book Bang編集部 新潮社
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