30代会社員、相続した〈4,000万円の実家〉の売却を決意するも「相続税+譲渡所得への課税」の往復ビンタに涙目…対応策はあるか?【相続専門税理士が解説】
「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」とは?
「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」とは、相続によって取得した土地や建物、株式などの相続財産を、3年10ヵ月以内に売った場合、それを相続するときに支払った相続税を、売ったときの譲渡所得から減額してくれる制度です。 具体的には、その財産を買ったときの金額(取得費)に相続税の金額を加算します。それにより譲渡所得が小さくなり、税金が安くなるのです。 なお、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」を適用するためには、次の4つの要件を満たしている必要があります。 (1)相続または遺贈により財産を取得した人であること (2)相続税が課された人であること (3)その財産を相続発生から3年10ヵ月以内に売ったこと (4)確定申告すること この特例は、先述したもうひとつの特例「相続した空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例」とは併用できません。いずれの選択が有利になるのか、事前によく検討するようにしましょう。
「取得費に加算する金額」から、譲渡所得を計算
取得費加算は、取得費に相続税の金額を加算しますが、支払った全額が加算できるわけではありません。相続した財産のうち、売却することになった財産の大きさの割合を計算し、その割合に相当する相続税だけ加算することになります。 その際、マイナス財産である借入金を差し引く前に、プラス財産の総額で計算することに注意が必要です。 たとえば、相続した財産の総額が8,000万円のうち、売却する実家不動産が4,000万円、相続税額が400万円だったとします。その場合、売却した不動産が相続財産の全体に占める割合は2分の1になりますが、その割合で相続税の金額を按分します。この例では、「400万円×2分の1」で200万円になりますが、その200万円を、取得費に加算することができるのです。 岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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