<春を駆ける・2020センバツ>選手紹介 星稜 荻原吟哉投手(2年)/寺西成騎投手(2年) 勝利向け切磋琢磨 /石川
3月19日に開幕する第92回選抜高校野球大会に向けて練習に励む星稜と日本航空空石川。春の舞台に挑む選手や彼らを支える人たちのストーリーを紹介します。(井手千夏が担当します) 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 ◇タイプ異なる「投」の2枚看板 身長170センチ、変化球をはじめとする制球力が高く、安定感のある荻原吟哉投手(2年)と、186センチの長身からきれいな回転のかかった最速146キロの直球を投げ込む寺西成騎投手(同)は星稜の誇る「投」の2枚看板だ。タイプの異なる両投手は中学時代に県内の強豪同士でしのぎを削り、チームメートとなった今では、勝利という目標に向け切磋琢磨を続ける。 2019年10月の秋季北信越大会。1回戦の高岡第一(富山)戦で荻原投手が自身初の完投で勝利を収めると、翌日の敦賀(福井)との準々決勝では寺西投手も7回を投げきって14奪三振の快投。優勝までの4試合で1イニングを除いて、2人でマウンドを守り続けた。 荻原投手は星稜中、寺西投手は能美市立根上中出身。中学3年生時にはともに日本代表としてU15(15歳以下)アジア選手権に出場した。チャイニーズ・タイペイ戦の最終回に登板した寺西投手は打者3人をぴしゃりと抑え、チームに勝利を呼び込んだ。「力で押し切る投球。相手の打者もびっくりしていた」(荻原投手)。一方、寺西投手は中学2年の県大会決勝で根上中をノーヒットノーランに抑えた荻原投手に「小さい体で伸びのある真っすぐと変化球。打てない」と感じた。 普段の2人は取り立てて野球の話をするわけではない。だが負けず嫌いの寺西投手は野球を離れても「テストの点を聞いてきて、勝っていたら子どもみたいに喜んで、負けたら悔しがる」(荻原投手)。一方、授業中にも自席で腕を振りシャドーピッチングをする荻原投手に、寺西投手は「いつも野球のことを考えている」と笑う。 2人のエースは悔しい思いも、ともにしてきた。昨秋の明治神宮大会初戦の明徳義塾(高知)戦で、先発の荻原投手は6回8失点。優勝の目標には届かなかった。宿舎に戻り、二人きりの部屋で荻原投手がぽつんと一言。「ごめんな」。普段は弱気な姿を見せないライバルに、肩を痛めて登板できなかった寺西投手は「自分が投げられたらカバーできた」と声をかけた。 そんな2人を林和成監督は「成長する上で互いに欠かせない存在。チームとしても相手や試合展開を見て起用ができるのはありがたい」とみる。「勝つ上で1人ではだめ。2人が軸になってチームを支えていく」(寺西投手)。甲子園のマウンドを目指し、ライバル同士の競争が続く。