FOMC年内3回利下げシナリオ維持はサプライズ:日銀の年内追加利上げの制約に:当局の防衛ラインまで再び円安が進む
6月利下げの可能性が高まる
他経済情勢が安定を維持する中で利下げが検討されているのは、いわば「予防的措置」である。インフレ率が低下を続け、インフレ期待が低下する中で政策金利を維持すれば、実質金利(名目金利-インフレ期待)が上昇し、景気を過度に抑制する可能性が将来生じる。そうしたリスクを低下させるための予防的措置であるため、金融市場に動揺をもたらさないため、予見性が高い形で緩やかに利下げを実施するというのがFRBの考えである。 年内にFOMCは6回残されている。年末にかけて一定程度のペースで利下げを進めるのであれば、5月1日のFOMCで利下げを開始し、FOMC2回に1回のペースで11月まで利下げするか、あるいは6月12日のFOMCで利下げを開始し、FOMC2回に1回のペースで12月まで利下げするかとなる。しかし、次回5月のFOMCでの利下げはあまりに唐突だ。 そのため、次回5月のFOMCで利下げの方向性が示され、6月のFOMCで利下げが開始される可能性が高いことを、今回のFOMCの政策金利見通しは示している。
いよいよ金融引き締め効果が顕在化してくる可能性も
年内は3回の利下げの可能性が高いが、来年以降については、景気情勢が悪化すれば、利下げペースは高まるだろう。それは、長期金利の低下、ドル安、株安など、金融市場に大きな影響を与える。 FOMCが予想する政策金利の長期均衡水準は2.5%(中央値)であり、現在の水準はそれを3%程度も上回る。この政策金利の水準で、景気減速感が強まらないのは、過去の経験に照らせばかなり不思議なことだ。 その主な要因の一つは、コロナ問題を受けて実施された財政拡大や異例の金融緩和がマネーを急拡大させ、いわゆる過剰流動性を作り出したことだろう。これが、金融引き締め効果を相殺してきた面があるのではないか。 しかし、政府のコロナ対策が一巡し、FRBが金融引き締めを進める中、マネーストック(M2)の名目GDP比率が長期トレンドまで低下し、過剰流動性状態は解消しつつあると考えられる(図表)。この先は、インフレ率、インフレ期待の低下が実質金利の上昇を通じて金融引き締め効果を強め、それは景気に一定程度の減速効果をもたらすことが予想される。そうなれば、FRBの利下げ観測は強まることになる。