中国・ロシアの「ドル離れ」は止められるのか…トランプ新大統領がチラつかせる「関税100%」の危うさ
■BRICSのドル離れに歯止めをかけたいトランプ新大統領 年明けに就任する米国のトランプ新大統領は、SNSであるXの自身のアカウントで、ドル離れを進めようとするBRICSに対して、100%の輸入関税を課すと表明した。先にトランプ大統領は、諸外国からの輸入品に対して10から20%の関税を課す方針を表明していたが、カナダやメキシコの輸入品には最大で25%の関税を課すとしていた。 【図表をみる】BRICSの貿易総額の国別内訳(2023年) トランプ新大統領が関税を強化する理由は、貿易赤字の是正と国内雇用の確保にあると考えられる。関税の強化をチラつかせることで、諸外国の企業が米国に拠点を移転し、雇用を生み出すことを期待しているのだろう。またカナダに対しては、特定の合成麻薬が米国に流入することを防ぐ観点からも、関税の発動をチラつかせている。 つまり、トランプ新大統領は、諸外国に対して一種の行動変容を強制するための手段として、関税を引き上げるという手段を用いていることになる。ではトランプ新大統領が、100%の関税を課すことでBRICSに対して何を求めているかというと、とりわけロシアを中心に議論が進んでいる「ドル離れ」の試みを止めることに他ならない。 近年、BRICSやそれに近しい新興国の間では、米ドル以外の通貨を用いて貿易・金融決済を行うこと、すなわち「ドル離れ」の議論が活発化している。米ドルではなく双方の通貨を用いた決済が奨励されており、それに加えて、いわゆる中銀デジタル通貨(CBDC)の仕組みを用いた独自の決済網を整備しようという構想も議論されている。 BRICSや新興国で進むこうした動きに歯止めをかけ、基軸通貨としての米ドルの位置づけを確保しようという思惑があるため、トランプ新大統領は100%関税を表明したようだ。もともとトランプ新大統領は、下野していた間にこうしたスキームの検討を共和党関係者との間で進めていたと報じられており、それが現実のものとなったかたちだ。