「年を取るほど充実していく」…オードリー・タンが語る、定年後を「人生の本番」にする画期的な「支援のAI」
コロナ禍において国民全員にマスクを配布するシステムをわずか3日で構築し、世界のグローバル思想家100人にも選出された若き天才オードリー・タン。自身もトランスジェンダーであるタン氏が、日本の若者に向けて格差やジェンダー、労働の問題からの「解放」をわかりやすく語る『自由への手紙』(オードリー・タン著)より抜粋してお届けする。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『自由への手紙』連載第36回 『コロナ禍の台湾でなぜイノベーションが起きたのか…その背景にあった驚きの国家体制とは? 』より続く
シニア世代は「輝ける絶好の機会」
このインタビューでもう一つ、日本のビジネスにまつわる問題として問われたのは、日本の定年問題について。 日本では、シニア世代の多くの人々は「仕事を続けたい、活動的でありたい」と望んでいます。平均寿命がのびたことで、100歳まで、またはそれ以上まで生きることがありえます。 人が100歳まで生きるとして、90歳になっても現役世代のように働くことは難しいでしょう。しかし、「支援のAI」が助けてくれれば、状況は変わります。年齢を重ねてもできることが増えて、充実していくはずです。 また、自分の経験や蓄積を提供するという、知恵の労働(wisdom work)なら何歳になってもできます。これは若い人にとっても朗報でしょう。 65歳以上の人たちが現役世代と共に働き続ければ、両者には交流が生まれます。世代間の連帯はとても大切なことで、それもインクルーシブな社会を生み出すきっかけになるでしょう。 人間の労働力を長く活用することが、社会全体に一定の人的資源を提供することになる。その観点から言って、私は日本のあり方は良いと思います。 台湾では、シニア世代の人々を「Golden Age」「Golden Era」と呼んでいます。文字通り「輝ける絶好の機会」というわけです。 通常の定年を超えてもなお、社会貢献をしたいと切望する人々がたくさんいるなかで、もしもユニバーサルデザインをうまく推進することができれば最高です。日本には、障がいをもち、困っている人々を助ける「支援のAI」があります。今後は大都市だけでなくあらゆる地方で、誰でもこうした支援手段を利用できるようになるべきでしょう。 日本の内閣府が推進する「ソサエティー5・0」について、私たちは共有するものがたくさんあるととらえています。