「異次元の少子化対策」は150年前に実施されていた その結末を見ると…財源不足もあって廃止
柴原の取り組みについて、児玉さんは功罪含めて学ぶべき点があると指摘する。 「子育て支援政策で地方創生を図るという考えは現代に通じる。現在は、人口は倍増したが出生率は右肩下がり。柴原の方針を一助に子育ての課題を振り返り、安心して出産育児できる社会になるといい」 ▽柴原の子育て政策が残した教訓 明治時代に千葉県で実施された子育て支援。専門家はこう見る。 子ども政策の効果を研究する京都大の柴田悠教授は「児童福祉と経済発展を両立させようとした先見性に驚いた」と話す。 一方で長続きしなかったことをこう読み解いた。「堕胎、間引きといった当時の風習を否定するような取り組みであり、価値観や現状認識が違う県民に、なぜ政策が必要なのか理解が十分に浸透していないと反発は大きくなる。理解が伴わないと制度が成り立たないという教訓だ。民主主義であれば政策に反発する県民が選挙で知事を交代させるという方法がありうるが、当時は関係者の多くが協力しないという形で制度が成り立たなくなった」
東京大の山口慎太郎教授(家族の経済学)は、子育て支援の特徴をまず指摘した。 「長期的には社会全体にとって利益があることだが、すぐに効果が目に見えて出るものではない。岸田首相が提唱する〝異次元の少子化対策〟も何十年も続くという信頼がないと、政策の箱として用意されていても誰もあてにしない状態になる」 山口教授自身は、長男をカナダで育てた。カナダの雰囲気は「小さい子は町全体から祝福されているのかと思うくらいに周りが親切だった」。その経験から、地域の「気風」が重要だと説く。「大切なのはお金よりも子育てを応援しようという地域の気風。全体で子育てをしようという雰囲気が醸成されることが少子化対策につながる」