長引く避難生活…農業ハウスが受け皿に 珠洲市の被災農家が環境整備 湧き水活用、風呂も
石川県珠洲市のイチゴや米などの農家、皆口英樹さん(44)は、能登半島地震で被災した地域住民の避難先として農業用ハウスを開放し、暮らしやすい環境づくりに力を注ぐ。農業資材などを活用して水源を確保し、トイレや風呂なども整備。「ここにいたいという人が一人でもいるうちは開放を続けて協力したい」と話す。 【画像】ハウス近くの水洗い場。つなぎ合わせたビニールパイプで水を運び込んでいる 高設栽培の棚を組み立てる予定だったイチゴハウス2棟(約800平方メートル)を1月1日夜から自主避難所として開放。農家で地域を離れたくない人や仮設住宅に申し込み、返答待ちをしている人など、13人が今も避難生活を送る。 皆口さんは「生活や揺れが不安で、ここにいることを望む人がいる限りは避難所として開放を続ける。営農再開は今の避難生活が解消してから」と話す。自身の自宅は一部損壊した。「住めなくはない」が、余震が怖いため、ハウス近くにある観光農園の受け付け小屋で家族と暮らしている。
寒さ対策万全「日が照ると暑いくらい」
避難者が安心して過ごせる環境づくりを重視。自作で水洗い場を設けた。地震でハウス近くに新たな水源が出現していることを発見。高設栽培で使う予定だった蛇口と複数のビニールパイプを接ぎ合わせ、ハウス近くに作った水洗い場に、水を引き寄せている。 ハウスは観光農園としても使っていたため、近くにトイレは備えていた。水を引いたことで、水洗機能を整えることもできた。 テントとブルーシートを使って、ハウス近くに風呂スペースも設置した。長野県から訪れたボランティアから借りたバスタブに、まきを燃やして熱を送る装置を接続。引いた水を入れてお湯を沸かす。まきには近隣から出た廃材を活用する。 ハウスはカーテンを二重にしてあり、真冬でも「日が照ると暑いくらいに暖かくなる」という。その上で、発電機を使ってハウス内にファンヒーターも備え、寒さ対策も万全にした。(浦木望帆)
日本農業新聞