気鋭のクリエイター、ロエベ、深津絵里がコラボレート! その「風変わり」な舞台裏をクローズアップ。
深津が演じる女性の立ち振る舞いは、"強さ"というものを表現しているとも話す。「彼女は、過去にトラブルがあった男性と再び対峙するために、あの場にやってきたわけですから。男性に面と向かって対峙するタフさを持ちながら、女性らしいフェミニンな一面も持っている人。長い年月を経て、内なるパワーを培ってきた女性なのです。男性社会の中で、徐々に地位を築いてきた。"優雅で自信に満ち溢れた女性"という理想像を胸に秘め、それに近づくために、苦い経験も乗り越えてきた。 そんな彼女は、自身の女性らしいフェミニンな一面を尊重していて、男性のように振る舞ったり、極端な行動に走らずとも、自らがタフさを発揮できると感じているのです。彼女のアイデンティティは、オープンマインドでエレガント。フェミニンでありながら強さも兼ね備えている。彼女は自分の価値を知っている女性なのです」
このショートフィルムを通して、八代監督が伝えたかったことは何なのか? 「描きたかったのは、パワー。それはさまざまな強さについてです。深津さんの役柄は、自分に正直で実に人間的な人物。一方、レザージャケットを着た男性は、生まれ育った環境や境遇によって形成された、硬直したキャラクターを表現できればと思いました。深津さんには、他のキャラクターにはない人間くさい一面を表現してもらいたかった」。 制作にあたって数多くのプロットを考えていたという八代監督。「さまざまなジャンルの映画をもじった内容で、どれも楽しいものばかりでしたが、ユーモアがありながら日本的で西部劇のワンシーンを思わせるこの『天道虫』のプロットに絞り込みました。向かうべき方向性を明確に絞って着地させることができました。壮大な物語のワンシーンのように感じられる、独創的なショートフィルムに仕上がったと思っています」。
主演の俳優、深津絵里が2023年9月にパリで開催されたロエベの2024年春夏シーズンのウィメンズコレクションのファッションショーに駆けつけ、話題をさらったことは記憶に新しい。彼女にとって初めてのパリコレで、フロントローを飾ったその姿に魅了された人も多いだろう。そして、今回、短編映画に主演した彼女は、八代監督が提案するスクリプトに深く関心を持ったのだとか。 「深津さんと一緒に仕事ができたことは、本当に夢のようでした。彼女はプロフェッショナルであり、偉大な功績を持つ方。『このキャラクターはどんな人なのか』、『どんなバックグラウンドを持っているのか』、『彼女は気難しい性格なのか、または通念に捉われない人なのか』など、キャラクターを深ぼる質問をいくつもしてくれ、対話を重ねることができたんです。当日の深津さんの演技は、私の想像を超えるものでした。役についても事前に熟考して下さっていたようで、私から演技に関する要望などは一切必要なく、撮影を終えることができました。彼女だけでなく、このプロジェクトに携わってくれた皆さんは本当に素晴らしく、まさにドリームチーム! すべてのプロセスが楽しく、その想いを映像から感じてもらえたら幸せです」。
text: Tomoko Kawakami, photography: Katsuhide Morimoto