「無事に日本に帰ってね」。乾燥チーズと現金100元、遊牧民の優しさにほろり
ウジムジさん一家で滞在する最後の日、出発前にウジムジさんから「両親の写真を撮ってほしい」とリクエストされた。彼女の父親はこの辺りではちょっと有名な相撲選手で、馬も大変好きだ。そこで、自慢の黒い馬に乗った写真を撮ってほしがっていた。 とっても寒い日だったが、何とか無事撮影ができた。日本に戻る前、何枚か選んで額に入れて送った。彼女からは感謝の電話があった。 取材が終わって町へ帰るときも、ウジムジさんはわざわざ一緒に行くことにしてくれた。出発する際、ウジムジさんの母親は「無事に日本に帰ってね。また、ぜひご家族と一緒に来てね」と乾燥チーズ1袋と現金100元を渡そうとしてくれた。私は、お金は返し、チーズをいただいた。自分たちにお金がなくても他人にはなんでも贈ろうとする優しさに、涙が出そうになった。(つづく) ※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第9回」の一部を抜粋しました。
---------- アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA) 1977年 内モンゴル生まれ 2001年 来日 2013年 日本写真芸術専門学校卒業 国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。 主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。