「客室の2割稼働できず」人気の黒川温泉 客は戻るも人手不足…“食”キーワードに課題解決へ
年間100万人の観光客が訪れる熊本県南小国町の黒川温泉。30の旅館が集まる国内有数の人気温泉地です。コロナ禍が明けて、温泉街には、にぎわいが戻ってきましたが、宿泊業者は、人手不足に直面しています。 【動画特集】慢性的な人手不足に黒川温泉も悲鳴… 解決のカギは「泊食分離」
「客は戻ってきたが、従業員が…」
1986年創業の旅館「奥の湯」。11月は紅葉のトップシーズンで、平日はインバウンド客、週末は国内の観光客でにぎわっていますが、26室のうち2割程度は予約を受け付けていません。 社長の音成貴道さんは「コロナ禍でお客さんがいなくて、離れていった従業員もいる。お客さんは戻ってきたけれども、今度は従業員が足りない状態」と話します。 食事は食事処。人手不足で、部屋食の対応はやめました。 従業員の始業は午前7時半。昼に3時間の休憩はありますが、夕食の片付けを終え、終業は午後9時になります。不規則な勤務体制や人手不足は 業界全体が直面する課題です。
旅館は食事がセットだが…「泊食分離」に注目
課題解決へ音成社長が注目したのが「泊食分離」。通常、旅館は宿泊と食事がセットになっていますが、宿泊と食事を分けることで、労働条件を変えたり、宿泊客の滞在時間に変化をつけられないかと考えました。
今年9月には、温泉街の近くに「Au Pan&coffee」をオープン。地元食材を中心に使用して焼き上げたパンや、焙煎から手がけるコーヒーを楽しむことができます。 店長の菊池昭一さんによると「外国人の方は和食よりもパン食の方が多くて、朝は外国の方がとても多い」といいます。
「Au Pan&coffee」が整備されたのは、段々畑だった約3000平方メートルの敷地。さらに、来春以降には、日本食や洋食など新たに7つの飲食店を順次オープンさせる計画です。 これには、ほかの旅館から「お昼時になると(黒川温泉には)飲食店が少ないので人がいなくなってしまう。ここを目的に来る人たちが増えれば、もっとにぎやかになると思いますし、食の方向でも引っ張っていただきたい」と期待の声がよせられています。
「黒川温泉一旅館」温泉街が一つの旅館
「自分の旅館だけではなく、この地域の課題というのが、人手不足。今までは、旅館があってという感じだったけど、それに食の魅力を付与することで、この地がより良くなるんじゃないかな」と語る奥の湯の音成社長。 温泉街自体が「一つの大きな旅館」で、それぞれの旅館は「部屋」、道路は部屋を結ぶ「廊下」という考え方がある黒川温泉で、人手不足解消の一手は「食」によるにぎわいづくりへの新たなチャレンジでもあります。