ネットと世論調査で“熱烈支持”される「高市早苗氏」 史上初の“女性総理候補”に吹き荒れる「3つの逆風」
公開討論会の落とし穴
「2つ目は、安倍さんが首相だった時と社会情勢が大きく変わったことです。2012年12月に自民党は政権を奪取し、安倍さんが首相に就任しました。看板政策の『アベノミクス』は株価を上昇させ、好景気への期待が高まりました。しかしデフレ基調の経済を上向きにさせることは失敗し、国民は今と同じように低収入に苦しんでいましたが、物価だけは比較的、安かった。一方、現在はインフレが進行しており、実質賃金は減少の一途です。安倍さん流の安全保障や外交といった政策は、それ自体は重要であっても、党員や有権者は『そんなことより物価や景気を何とかしてくれ』が本音でしょう。高市さんが得意とする政策課題に関心が集まらない可能性があるのです」(同・伊藤氏) 生活が苦しいという国民の不満を反映し、一部の立候補者は経済政策の公約を強くアピールしている。例えば自民党幹事長の茂木敏充氏は総裁選出馬を表明した4日の記者会見で防衛力強化の財源とする増税と、少子化対策に充てる公的医療保険料への上乗せをやめると明言した。国民負担を軽減させるためだ。 「私は興味深い動きだと思っているのですが、小泉さん、高市さん、石破さんの3人より知名度が劣る候補者が政策論争を挑んでいます。内容も国民の不満を反映し、国民の所得を増やそうとする政策が目立ちます。政策で世論の関心を惹こうとするのは面白いですが、高市さんに吹く逆風の三つ目として、公開討論会の問題を挙げたいと思います」(同・伊藤氏)
イメージ勝負となった都議選
論客の高市氏は討論会で存在感を発揮したいと考えているに違いない。ところが逆風となるのが候補者の数だ。 「これだけ候補者が多いと“各自5分間”の発言で終わってしまう可能性があります。そうなると高市さんが他の候補者に論争を挑むという場面が生まれないかもしれません。どの候補者も討論会でポイントを稼げなかったとなると、都知事選が似た動きになりましたが、結局は候補者のイメージ勝負となってしまいます。これは高市さんの望む展開ではないはずです」(同・伊藤氏) かつて高市氏は松下政経塾に入塾し、渡米して下院議員の事務所で勤務したことがある。1989年に帰国すると、自民党はリクルート事件に端を発する政治改革論争で激震が続いていた。 高市氏の経歴に目を付けた自民党が「アメリカで政治資金はどうなっているのか」の解説を依頼したところ「予想に反して、高市さんは全く専門的な知識がありませんでした」(自民党関係者)との証言もある。 それから約35年が経過し、高市氏が政治家として存在感や知名度を高めてきたことは事実だ。「初の女性首相」という観点で取り上げられることも増えてきた。彼女は今回の総裁選で文字通りの正念場を迎える。“高市旋風”を巻き起こして決選投票に残るのか、はたまた再び敗北してしまうのか──。 デイリー新潮編集部
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