悪夢の送球から2775日 ノッカーで再び立った甲子園 センバツ
2775日ぶりに立った甲子園のグラウンドから見た景色は懐かしかった。 兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で19日に開幕した第94回選抜高校野球大会。春夏通じて初出場の和歌山東で副部長を務める山根翔希(しょうき)さん(25)が倉敷工(岡山)との試合前にノッカーを務めた。市和歌山の二塁手として出場し、痛恨の「一塁送球」をしてサヨナラ負けした2014年夏以来の甲子園。山根さんは「戻ってきたなと懐かしい気持ち。あの時と変わらない。いつ来ても良い場所」と喜びをかみしめていた。 【応援イメージキャラクター特集】過去には小芝風花さんも 宿舎で塩を振り、体を清めてから甲子園入りしたという山根さん。初めて聖地に立つ選手たちの緊張をほぐすように、いつもと同じように外野へノックを打った。ノック前には選手たちのキャッチボールを外野の芝生で見守りながら時々、二塁付近に視線を向けた。 山根さんは14年夏の甲子園の1回戦・鹿屋中央(鹿児島)戦の延長十二回1死一、三塁の守りで、二ゴロの当たりを捕球する際に「イレギュラーして頭が真っ白になった」と1死しか取れない一塁へ送球。三塁走者が生還し、1―2でサヨナラ負けとなった(記録は内野安打)。泣き崩れて半田真一監督やチームメートに抱きかかえられながらグラウンドを後にした。この敗戦をきっかけに大学へ進学。卒業後は教員となり、昨年4月から和歌山東の副部長として指導している。 昨秋の近畿大会でチームが準優勝してから「センバツでノックを打たせてもらえないだろうか」と心の中で願っていたことがかなった。山根さんは「こんなに早く甲子園を経験させてもらい、感謝しかない」。甲子園の魔物は、悪夢だけではなく、喜びも与えてくれる。【安田光高】 ◇全31試合をライブ中継 公式サイト「センバツLIVE!」(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2022)では大会期間中、全31試合を動画中継します。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/hsb_spring/)でも展開します。