無口なブリヤート族の女の子。中国語のアニメやゲームに夢中になっていた
日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。その北に面し、同じモンゴル民族でつくるモンゴル国が独立国家であるのに対し、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれ、近年目覚しい経済発展を遂げています。しかし、その一方で、遊牧民としての生活や独自の文化、風土が失われてきているといいます。 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録しようとシャッターを切り続けています。内モンゴルはどんなところで、どんな変化が起こっているのか。 アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。
内モンゴルのブリヤート族、スレンジャッブさんの長男スルムヘンさんと長女チャルガンさんの子供2人は、実家から80キロ以上離れたハイラル市の中学校と小学校に通っている。このため、学校が始まると祖母と3人でハイラル市内に借りているマンションに行ってしまう。そこでは、祖母が子供たちの面倒をみているという。地方の学校を廃止し、大合併を進めた結果だ。 今年の2月と8月に取材に行った時は学校が休みだったので、2人の子供たちに会うことができた。スルムヘンさんはいつも両親の仕事をよく手伝い、料理も作るようになっていた。 長女のチャルガンさんはあまり話さないが、たまに私に中国語で話しかけることがあった。いつも中国語のアニメを見たり、ゲームをしていて、両親に注意されることもたびたび。気になったのは、彼女がモンゴル語ではなく、中国語で話すことだった。そして、同い年あるいはもっと小さい子供同士で集まって、やはり中国語で話しながら遊んでいる場面に何度も遭遇し、その現状に言葉を失った。 ある日、彼女がきれいな民族衣装に着替え、私を外に呼び出した。愛犬と一緒に写真を撮って欲しいということだった。私は喜んで何枚も撮ってあげて、後日、大きくプリントして額に入れて送った。(つづく) ※この記事は「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第14回」の一部を抜粋しました。
---------- アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA) 1977年 内モンゴル生まれ 2001年 来日 2013年 日本写真芸術専門学校卒業 国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。 主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。