データドリブン思考を身につける
■データ分析をするために意思決定プロセスを整える データドリブンな意思決定プロセスの設計 いきなりですが、「データ分析で何を解けばいいんですか?」「何を予測すればいいですか?」、こういった質問を聞くと、分かっていないなあと思ってしまいます。かつての自分もそんなことを自問自答していました。でも、データ分析は意思決定プロセスを改善する手段であることに気付いてからは、そのような質問はナンセンスであると思うようになりました。 データ分析は、直接的には課題を解決してくれません。前章で述べた通り、意思決定プロセス(=判断や決定の生産方法)をデータ分析で改善することで、課題を解決するのです。もう少し丁寧に説明すると、現状の意思決定プロセスは、勘と経験に頼っています。そのような意思決定プロセスには、「精度が低い」「人件費がかかる」「意思決定に時間がかかる」「属人的である」といった課題があります。それを、データ分析を活かした意思決定プロセスに改めることにより、これらの課題を解決するのです。 誤解なきように申し上げると、筆者は、勘と経験を否定しているわけではありません。勘と経験に頼るべきところは頼る、データ分析と勘・経験の相補的な意思決定プロセスでも構わないのです。ただし、IT革新で、データ分析が意思決定プロセスに果たす役割はますます大きくなってくると思います。以下では、「データ分析を活かした意思決定プロセス」のことを「データドリブンな意思決定プロセス」と呼びます。 話を戻しましょう。データ分析は意思決定プロセスを改める手段なのですから、問うべきは「データ分析で何を解けばいいのですか?」ではなく「データ分析を活かしてどのような意思決定プロセスを作りたいのですか?」なのです。その意思決定プロセスの構成要素として「データ分析で何を解けばいいか?」は具体化されるのです。 すっきりしない方は、レストランの仕事に例えて考えれば腹落ちすると思います。現行の調理方法はコックの勘と経験に頼っているため、「味覚のバラつき」や「調理スピードが遅い」という課題があるとしましょう。それを解決するため、最新の調理器具を購入することにしました。しかし、どんな調理器具を購入すれば、課題解決するでしょうか。 この場合、「味覚のバラつき」や「調理スピードが遅い」という課題を見つめていても、決まらないでしょう。そうではなく、現状のコックの勘と経験に頼りきった調理プロセスを最新の調理器具を活かしたプロセスにどのように変えれば、「味覚のバラつき」や「調理スピードが遅い」といった課題を解決できるか、という枠組みで考えなければならないでしょう。 同じように、データ分析で「何を解けばよいか」を考えるのではなく、現行の勘と経験に頼った意思決定プロセスを、データ分析を活かしたプロセスにどのように変えれば、「精度が低い」「人件費がかかる」「意思決定に時間がかかる」「属人的である」といった課題を解決できるか、という枠組みで考えるのです。すなわち、課題解決につながるようなデータドリブンな意思決定プロセスを設計するのです。 しかしながら、データドリブンな意思決定プロセスを設計することは、簡単ではありません。なぜならば、現行の勘と経験に頼った意思決定プロセスは暗黙知のため、ベースとなる青写真を描きにくいからです。