真冬の憂鬱を吹き飛ばせ! ユニークな世界のカーニバル8選
米ニューオーリンズのマルディグラや、ブラジル・リオデジャネイロのカーニバルを知っている人は多いだろう。だが、規模はずっと小さくとも、伝統のカーニバルを祝う都市や町は世界中にある。キリスト教普及以前の民族的宗教における晩冬の祭りを起源として欧州で始まり、カトリックの四旬節(復活祭に先立つ40日間の禁欲期間)を前に肉を食べて楽しむ最後の祭典として世界に広まったカーニバルは、いずれもにぎやかで、華やかで、伝統に彩られている。その多くは、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されている。 ■スロベニア・プトゥイ スロベニア最古の町といわれるプトゥイでは、羊の毛皮をまとい、リボンで飾られた巨大な仮面をかぶって腰にカウベルを下げた男たちが、通りを練り歩き、見物人らを囲んで踊る。この男たちは「クレント」と呼ばれ、仮面を通じて精霊の世界とつながり、踊りで冬を追い払って豊穣を願うのが習わしだ。 町の公式行事として64回目となる今年は、2月3日から13日までさまざまなイベントが行われ、最後の週末にはパレードが開催される。 ■ブラジル・オリンダ ブラジル北東部の町オリンダのカーニバルは、早い年には12月中に始まるが、佳境を迎えるのは四旬節直前の週末だ。先住民や奴隷貿易でこの地に連れてこられたアフリカ人の影響を色濃く反映しており、主役はサンバながら「フレヴォ」と呼ばれるアフリカ系ブラジル音楽の人気も高い。人々は思い思いの衣装で夜明けまで踊り続け、巨大な張り子の人形を担いで街中をパレードする。 2024年の開催について市長は、ブラジルのさまざまな音楽の名前を並べ「サンバ、マラカトゥ、カボクリーニョ、ブレガ、マンギビート、そしてフレヴォが融合し、多文化の市松模様を描くだろう。オリンダのカーニバルは誰にでも開かれていて、お金があってもなくても楽しめる」と述べた。
「逃げた悪鬼」が春を祝うポルトガルのカーニバル
■ポルトガル・ポデンセ ポルトガル北東部トラス・オス・モンテス地方にある小さな村ポデンセは、2月になると活気づく。赤、黄、緑のフリンジがついた衣装を着て、鼻のとがったブリキや革の仮面をかぶった少年や男たちが村に集まってくる。何世紀も続く伝統だ。 悪魔めいた仮面姿は「カレト」と呼ばれ、腰につけたカウベルをうるさく鳴らして村の平和と静寂を乱す。カレトは「逃げた悪鬼」を象徴しており、寒い冬が終わって豊穣の春が訪れる、この時期だけに許される喜びといたずらの化身とされている。 ■ボリビア・オルロ ボリビア高地の都市オルロでも、土着文化とカトリックの文化が融合しためくるめくカーニバルが18世紀から現在のかたちで祝われている。(当時、地域で最も豊かな銀山の坑道に聖母マリアの壁画が出現したことがきっかけで、土着の伝統がキリスト教色を帯びるようになったとされる。ただしユネスコは、聖母マリアらキリスト教の象徴の背後にアンデスの伝統的な神々が隠されていると指摘している) 現在、カーニバルは10日間続く。見どころは仮面、織物、刺繍などの大衆芸術で、土曜日に行われるパレードは目玉の1つ。約50組、3万人近い民族舞踊団が、坑道にある祭壇まで4キロの巡礼路を約20時間かけて往復する。中でも、悪魔の衣装と仮面をつけて躍動的に踊る「ディアブラーダ」は、カーニバルの主役となっている。 ■ベルギー・バンシュ ベルギー・エノー州の町バンシュは毎年、四旬節前の3日間、現存する中で欧州屈指の歴史の長さを誇るストリートカーニバルの会場となる。地元の人々は1月から華やかな衣装や仮面の制作を始め、太鼓に合わせて行進を練習する。 カーニバル初日の日曜日になると、通りやカフェは「マミゼル」と呼ばれる女装した男性たちでいっぱいになる。最終日となる火曜日には、カーニバル名物の道化師「ジル」が登場し、祭りは最高潮に達する。ジルは赤、黄、黒の衣装を身にまとい、木靴を履き、ダチョウの羽根でつくった大きな帽子をかぶっている。小さな眼鏡をかけた仮面をつけることもある。ジルたちに続いてさまざまな仮装をした人々がパレードし、地元の楽団による太鼓や管楽器の演奏に合わせて踊る。