定年後に夫婦で挑戦した白髪染めの開発、知識も資金もないけれど試行錯誤で自信の商品に きっかけは「抜け毛の悩み」、藍染め植物を活用
マイクロ波を使った実験でも壁が立ちはだかった。設備が高価な上、均一に熱を与えることができない。大量生産が難しい現実に直面した。一度は諦めかけた。だが考えてみると、熱は他の方法でも与えられると気付いた。沸騰したお湯に葉を浸してみたり、高温の水蒸気の中に葉を入れてみたり、いろいろな方法を何度も試した。「毎回結果を確かめるのが楽しみだった」と洋子さん。最適な方法を見つけるまで、5年ほどかかった。 ▽目標は法人化、後継者探しも 当時は化粧品の製造許可を取得していなかったため、生産と販売を別の企業に委託することにした。高知県内には見つからず、四国に範囲を広げた。いったん断られたものの、藍染め製品を販売する香川県の会社との共同研究が決まり、販売できるようになった。だが、その後会社が倒産。特許を買い取った後、自宅近くに農園と納屋を改築した製造所を構え、「藍里農園&コスメティクス」として生産を開始した。現在は高知県内のスーパーや藍里農園のウェブサイトで販売する。東京を中心に約40店舗の美容室でも使用され、評判は上々という。 別売りのへナの毛染めと混ぜると、茶色に染めることも可能だ。ヘナにはトリートメント効果があり、2度染めでしっかり色が入るという。「髪にも肌にも優しい。もっと世の中に広めたい」。洋子さんのまなざしは熱い。
事業が安定しつつある現在、2人は後継者探しに動き出している。目標は人材確保と事業拡大、そして法人化だ。まずは品ぞろえを増やそうと、足用せっけんの開発を進めている。文雄さんは「後継者が決まったら安心して引き継げるような経営をしたい」と意気込みを語った。 白髪染めは内容量の異なる2種類を展開。30グラムで2310円、100グラム7370円。