批判の声があがった愛知大会決勝『午後2時開始』…暑さ指数、夕立や落雷リスク、考え抜いての決断だった【高校野球】
◇記者コラム「Free Talking」 熱い試合が繰り広げられる夏の高校野球。今夏も地方大会から甲子園まで、足をつった選手の治療で試合を中断した場面を幾度も見た。 今夏の甲子園は、暑さ対策を理由に決勝の試合開始時刻を例年の午後2時から午前10時に変更。地方大会は40地区の午前10時を主流に午前中に試合開始を設定したのが43地区で、午後開始は6地区だった。7月28日は10地区の決勝があり、愛知大会以外は全て午前10時開始。少数派だったこともあって「愛知だけかわいそう」などと批判の声があった。しかし、愛知県高野連は来夏も開始時刻を変えない方針だ。鶴田賀宣理事長は「今年の結果も踏まえて来年以降も午後2時で考えている」と説明した。 今夏の決勝は中京大中京―東邦の好カードで、1万2000を超える観客が集まった。その中で熱中症の症状を確認したのは2人で、いずれも軽症。体調不良を訴えた選手もいなかった。当日券を求める人の列ができないように内野席を全て前売りにしたほか、試合開始より5時間半も早い午前8時半に開門して、場所取りのために昼すぎに行列ができることを避けた。 愛知では、2020年の県独自大会から午後2時に変更。19年の101回大会で、午前10時に始まった誉―桜丘の決勝がきっかけ。試合が白熱する終盤に差しかかった正午ごろ、スタンドで応援していた生徒らが大勢倒れたという。 夕方に向けて徐々に涼しくなる午後開始を検討する中、熱中症対策の研究を専門とする中京大教授に計測してもらった「暑さ指数(WBGT)」が参考になった。対象とした7~8月の岡崎、小牧、瑞穂の3球場で、危険な数値は午前に多く見られた。夕方開始にすればより暑さは避けられるが、夕立や落雷などのリスクもあり、決勝の継続試合は避けたい。その結果、午後2時に決まった。 今夏こそ一定の成果は出たが、「これだけ暑いと課題は絶対に出てくる。後手後手にならないように今後も対策したい」とまだ最善だとは思っていない。3年という限られた高校野球生活を守るため、大人たちが知恵を絞り続けている。 確かに、午後2時は一番暑い時間帯というイメージはある。ただ、考え抜いての判断だったと分かった。高野連に限らず、高校野球を守りたいすべての人でアイデアを出し合っていきたい。(アマチュア野球担当)
中日スポーツ