帝京第三が8年ぶりの全国へ 相良和弘監督「7年間があったからこの優勝がある」
第102回全国高校サッカー選手権山梨予選決勝で、帝京第三が日本航空を延長の末3-2で破り、8年ぶり11度目の栄冠に輝いた。チームを率いるのは就任23年目を迎えた相良和弘監督だ。 【フォトギャラリー】日本航空 vs 帝京第三 5度目の優勝を遂げた第79回大会は引率教員(コーチ)の肩書で全国選手権に出場。2連覇した第80回大会では監督として指揮を執り、初陣の全国選手権は徳島市立との1回戦に2-0で快勝したが、2回戦では星稜に1-2の惜敗だった。 その後82、85、92、94回大会で優勝したが、86回大会以降は新興の山梨学院がメキメキと力を付け、初出場した88回大会での高校日本一をきっかけに山梨の顔となる。さらに台頭してきた日本航空や古豪・韮崎も伝統の強さを継続し、帝京第三はなかなか勝ち切れない年月を積み重ねた。 今回は8年ぶりに浴びるスポットライトである。相良監督は臥薪嘗胆の思いでこの7年間をどう過ごしてきたのか。 「無理もしながら時代に合わせてやって来ましたけど、なくしてはいけないものもあります。セカンドボールを拾うとか球際で負けないとか、(勝負への)執着心といったうちの伝統は大事にしてきた。その上で一方通行にならない指導を心掛け、私たちも勉強しながら歩んできました。そういった7年間があったから今日(の優勝)があるのです」 新チームは2月の新人大会決勝で韮崎を破って優勝。しかし5月の関東高校大会予選と6月の全国高校総体予選では、いずれも決勝で山梨学院高等学校に3失点して完敗した。 8年ぶりの選手権切符を手に入れるため相良監督は夏以降、メンバーを固定することなく複数の組み合わせにチャレンジした。「遠征でも2チームに分けて試合をしたので、誰がどのポジションを任されても対応できるようになった」と応用の利く選手と柔軟性のあるチームが誇らしそうだ。
決勝ゴールを挙げた嶋野創太(3年)は、3-0で快勝した東海大甲府との準決勝はベンチ入りできず、サポートメンバーとして後方支援していたMFだ。 後半20分、左の2列目で先発した秋間翔太(3年)を交代する際、指揮官は迷ったそうだ。「嶋野でいくか、桒原(一斗)にしようか考えた」と話すと、「秋間が(旺盛な動きで)前半に相手の右サイドバックを消耗させてくれた。嶋野のスピードを生かそうと思った」と説明。左2列目に入った嶋野が期待通りに働き、延長後半2分に決勝点を挙げる。さい配はズバリ的中した。 帝京第三は前半の立ち上がりから主導権を握ると、後半もその勢いを持続させて攻勢を強めた。13分に遊佐凛太朗、29分に櫻井元舟の両3年生2トップのヘディングシュートで2点を奪った。ところがその後、次々と攻撃的な選手を送り込んだ日本航空の反撃に遭い、34分からの5分間で2失点。すぐに追い付かれてしまった。 それでも相良監督は動じなかった。「年間の失点が多く無失点で勝つのは厳しいので、2失点までならと思っていた。今年の攻撃力を考えれば3点がノルマ。3-2で勝ったのでノルマ達成です」と笑わせた。 チームの戦いは88、99回大会で全国制覇を成し遂げている山梨学院との戦いでもあった。 最近5年間だけでも、山梨学院にことごとく跳ね返されてきた。 全国選手権予選は、2019年から3年続け準々決勝で敗れ、前回大会は決勝で対戦し先制しながら逆転負けを食らった。山梨学院は今回、準決勝で日本航空に屈し対戦機会はなかったが、この好敵手を倒して優勝することが相良監督とチームのスローガンなのだろう。 「日本一になって山梨のレベルを引き上げてくれたチームですからね、すごく高い壁ですよ。それをどう越えていこうか、どうやって倒していこうかと、指導者としていろいろ考える楽しみのあるライバルです」 指揮官は相手を敬慕しつつ、穏やかな表情の中にもたぎる闘争心を見せつけた。 (文・写真=河野正)