【観光船沈没】刑訴法は?専門家は?捜査機関の狙いとは?1週間…社長・桂田容疑者逮捕の“意味”
知床観光船の沈没事故で、運航会社の社長・桂田容疑者が逮捕されてから1週間です。 なぜ、事故から2年5か月経って逮捕となったのか。 当然という声の一方で、疑問の声も聞かれました。 (青柳記者)「観光船の沈没事故から2年あまり経って桂田容疑者は逮捕されました。こちらの勾留先では取り調べが進んでいるとみられます」 「知床遊覧船」の社長・桂田精一容疑者。 業務上過失致死と業務上過失往来危険の疑いで逮捕され1週間が経ちました。 桂田容疑者は2022年4月23日、運航管理責任者として安全を確保する義務を怠り、知床半島沖で観光船「KAZUⅠ」を沈没させ、乗客乗員26人を死亡させた疑いが持たれています。 桂田容疑者は逮捕後の取り調べに対し、天候が荒れた場合「船長の判断で引き返すと思っていた」などと従来の主張を繰り返しているといいます。 いまも客足が戻らず観光船事故の影響が残る斜里町ウトロ。 桂田容疑者の逮捕に観光客の反応は様々です。 (観光客)「あれだけの犠牲者を出すような大事故を起こした責任者なので、やっぱりその日の運航状況を判断するのも社長だと思うので、逮捕されるのは当然かなと思います」 (観光客)「いまさら証拠隠滅もないだろうから、何で逮捕なんだろうな、書類送検でいいんじゃないかなと思ったけど」 これまで事故以降もウトロに住み続け、事情聴取にも応じていたという桂田容疑者。 弁護人は身体拘束を不服として釧路地裁の決定に意義を申し入れる特別抗告を、9月21日にしているといいます。 (桂田容疑者の弁護人)「逮捕されたのは想定していなかった事態。直前に証拠隠滅を疑われる行為があったとか、逃げたと疑われるようなことがあったとか、取り調べに来いと言われて拒否したとか、そういうことが何もない。それでなんで身体拘束する必要があるんですか?ということだと思う」 刑事訴訟法では、逮捕して身柄を勾留する条件として、 ・罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき ・被告人が逃亡または逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき と定められています。 一方、第一管区海上保安本部は、逮捕までにこれだけの時間がかかったのは、容疑の裏付け捜査のためで、今回逮捕に至った理由についてはー (海上保安庁 瀬口良夫長官)「証拠隠滅の恐れもありましたので、逮捕の必要性があると判断した」 「証拠隠滅の恐れ」から逮捕の必要性があるとし、逃亡の恐れについては回答を控えました。 元検察官でもある高野弁護士は、捜査機関が逮捕した目的は2通り考えられると話します。 (高野俊太郎法律事務所 高野俊太郎弁護士)「ひとつはこの2年半の間に捜査は尽くされた。今後の裁判を確実に進めるために身柄を確保しておこうという観点。もうひとつは本人がいまだ否認していて、最終手段として身柄を確保して、本人に色々な証拠をぶつけて、本人の自白を確保する、そのための身柄確保という考え方もある。自然の条件を原因とする事故は実際に刑事責任を問うのは難しい。認めているかいないかより客観的な証拠がどのくらい収集されているかだと思う」 問われるは観光船沈没事故の責任の所在。 桂田容疑者の勾留は続いています。