トランプ2.0が日本の脅威になり得る? 「台湾の現状を崩す」対中政策
「強硬」の反対なら中国と関係改善へ
ではトランプが再選した場合、「トランプ2.0」の対中政策はどのようになるのだろうか。 トランプは1期目の選挙期間中から、中国批判を繰り広げてきた。とくに中国との貿易赤字を敵視しており、2018年7月以降、米国に輸入する中国製品に追加関税をかけてきた。バイデン政権の対中政策についても、トランプは「弱腰」と批判を展開している。 「トランプ2.0」でも引き続き対中強硬政策を続けるのだろうか。第一次トランプ政権で外交政策に携わった高官はこう予測する。 「大統領自身が対中政策に主義や思想があるわけではなく、必ずしも1期目の強硬政策を続けるとは限らない。そのときの世論の『風』を読んで、支持の獲得に有利になるかどうかを重視している。それによって、極端な対中強硬に振れるか、融和路線に舵を切ることも十分にある。ライバルであるバイデン氏と正反対の政策を選ぶことは間違いない」 「トランプ2.0」の基本政策が「反バイデン」路線だと仮定すると、トランプ自身が今のバイデン政権の対中政策をどのように評価しているのかが重要になってくるだろう。 トランプがバイデン政権の対中政策を「弱腰」とみていれば、さらなる強硬路線を採るだろう。公約に掲げているように、中国に対し、低関税での輸入を認める貿易優遇措置の「最恵国待遇」の取り消しに踏み切る可能性がある。安全保障面でも1期目のように軍備増強を進め、中国への圧力を強めていくこともありうるだろう。 台湾情勢が緊迫してきた場合、米軍を参戦させて中国との交戦も辞さない姿勢を示すことも十分に考えられる。 一方、バイデン政権の対中政策が「強硬」だとトランプが評価していれば、中国との関係改善に動くことも考えられる。 バイデン政権はトランプ政権の対中強硬路線を受け継いだうえ、日本や韓国との同盟強化を図って対中抑止を強めてきた。中国向けの先端半導体の輸出規制を強めたほか、米国が主導する新たな経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を打ち出して、経済安全保障の観点から中国への圧力を強化した。 2023年8月には、ワシントン近郊の大統領山荘キャンプ・デービッドに岸田文雄首相と韓国の尹錫悦大統領を招いて首脳会談を行った。 この地に大統領が任期中に外国要人を招待するのは1回か2回だけ。日本の首相として初めて中曽根康弘が1986年にロナルド・レーガン大統領に招待されたほか、ジョージ・W・ブッシュ大統領が2001年に小泉純一郎首相を、2007年に安倍晋三首相をそれぞれ招いている。それだけバイデンが日本と韓国との同盟を重視していることの裏返しといえよう。 また、台湾政策についても、中国軍が台湾侵攻をした場合に米軍が防衛することをバイデンは4度にわたり明言している。 この反対の政策を「トランプ2.0」が採ったらどうなるだろうか。中国への先端半導体の輸出規制を緩和し、IPEFなどの枠組みを形骸化するだろう。一期目のように習近平政権と交渉をして、対中貿易赤字の縮小を中国側に約束させる見返りに安全保障で妥協をするディール(取引)をすることも考えられる。同時に日本や韓国に対し、米軍の駐留経費の負担増を求めてくるだろう。