閲覧注意の目玉ゼリー、脳みそケーキ、指クッキー…注文殺到「グロすぎるお菓子店」を立ち上げた女性店主の来歴
かつて作っていたグロ弁から現在手掛ける怪奇菓子まで、ナカニシさんの作品の数々を見て、彼女の話を聞くとわかる。細部にまで徹底的にこだわるアーティストなのだ。 だから、売り上げよりも重要なのは作品。見方を変えれば、その情熱によって生み出されたクオリティが、今の人気の源泉ともいえる。ナカニシさんが今、夢中になっているのは無理やり引き抜かれたように見える「ベロ(舌)」だ。 「ベトナムの『KFC』というホラー映画でベロを切ったり切られたり、食べたりするシーンを見て、ベロを作ろうと思ってね。それで、ベロスプーンっていうのを作っている人にベロの型を3つ作ってもらいました。その人も職人やから、こっちは裏側に筋を入れてみましたとか工夫してくれて。お菓子の型だから、本当は3つ同じものがええんやけどね(笑)」 ■たったひとりで新しい市場を切り拓いてきた ナカニシさんが丹精込めて作った白桃風味のベロは、今、大阪のカフェとのコラボメニューで、「天使の血祭りパスタ」として提供されている。今後、梱包して発送できるところまで作り上げたらオンラインショップに並ぶようだ。 ちなみにそのカフェでは、「草むらに落ちていた耳」というメニューもある。こちらは、鬼才デビッド・リンチ監督のサイコスリラー『ブルーベルベット』のなかに出てくる「草むらで耳を拾うシーン」を再現したものだ。 「私、これ面白い!って思ったら、もう絶対やりたいんですよ」と語るナカニシさん。指から始まり、目玉、脳みそ、耳、舌ときて、次はどんな怪奇菓子を生み出すのか。好奇心の赴くままに、たったひとりで新しい市場を切り拓いてきた彼女は、カルト的人気を誇るホラー映画『テキサス・チェーンソー』のエプロンをつけて、今日も工房に立つ。 ---------- 川内 イオ(かわうち・いお) フリーライター 1979年生まれ。ジャンルを問わず「世界を明るく照らす稀な人」を追う稀人ハンターとして取材、執筆、編集、企画、イベントコーディネートなどを行う。2006年から10年までバルセロナ在住。世界に散らばる稀人に光を当て、多彩な生き方や働き方を世に広く伝えることで「誰もが個性きらめく稀人になれる社会」の実現を目指す。著書に『1キロ100万円の塩をつくる 常識を超えて「おいしい」を生み出す10人』(ポプラ新書)、『農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦』(文春新書)などがある。 ----------
フリーライター 川内 イオ