終戦前、アメリカ軍は原爆投下の訓練のため、日本各地に「模擬原爆」と呼ばれる爆弾を落としました。神戸に落とされた模擬原爆を巡る"謎"に迫ろうと、研究を続ける大学院生を取材しました。 【動画】シリーズ戦後79年「ひょうご戦争の記憶」 神戸に落ちた「模擬原爆」 着弾地点の解明進める大学院生 広島と長崎。 日本に落とされた2発の原子爆弾は、一瞬にして多くの人の命を奪い、街に壊滅的な被害を与えました。

79年前の”謎”に迫る大学院生

神戸大学大学院の西岡孔貴さん

終戦から79年。 今、ひとりの若者が原爆投下の歴史に眠るある"謎"を解き明かそうとしています。 神戸大学大学院に通う西岡孔貴さん、26歳。 【西岡孔貴さん】 「大学に入る時に太平洋戦争関連の研究をしたいとずっと考えていて、当時特に関心があったのが日本海軍の真珠湾攻撃で、その辺りをまず研究したいと思っていた」

原爆投下の訓練…　神戸に落とされた4発の模擬原爆

ファットマン（左　米国国立公文書館所蔵）と模擬原爆（右　「原爆投下部隊」より/著：工藤洋三 金子 力）

今、西岡さんが研究を進めているのは、「模擬原爆」と呼ばれる爆弾です。 模擬原爆、通称「パンプキン」。 原爆を目標地点に正確に投下するための訓練として、1945年7月20日から8月14日までに、日本各地に49発が落とされました。 長崎の原爆「ファットマン」とほぼ同じとなる、長さ3.25メートル、重さおよそ4.5トン。 中は核物質ではなく、高性能爆薬が詰められていましたが、これにより全国で400人以上が犠牲になったとされています。 そして、神戸には、1945年7月24日、4発の模擬原爆が落とされました。 このうち1発は、神戸製鋼所を目標に落とされたものの、実際の着弾地点は今も分かっていません。 【西岡孔貴さん】 「図書館とか公文書館、そういったところを調査して当時の証言がどんなものが残っているのか　そうした文字資料の収集から開始しましたが、とにかく証言が見つからない　戦後79年が経つ今日まで着弾地点が分からない難しさがあった」

当時の男性の日記…航空写真…　残された資料から着弾地点を推測

1946年11月の摩耶山を写した航空写真　中央に白い「クレーター」のような跡が

あの日、神戸の街を、人々を襲った模擬原爆は一体どこに落ちたのか。 その謎に迫るヒントが、当時、神戸の葺合地区に住んでいた男性の日記に残されていました。 【葺合区北部の警防団副団長を務めていた男性が残した日記】 「七月二十四日　晴　午前四時四十分警戒警報発令。（B-29の）編隊は波状的に近畿に入り当市にも製鋼所附近及北方山中に投弾」 さらに、西岡さんが目をつけたのは戦後間もない摩耶山を写した航空写真でした。 【西岡孔貴さん】 「1カ所だけ大きい着弾跡のようなものがみられる箇所があって、これだけ大きい着弾跡が作れる爆弾というと数が限られるのでこれが模擬原爆の跡ではないか」 西岡さんは、クレーターのような跡があった地点を目指し、去年12月、摩耶山に入りました。 すると、金属探知機が反応を示したのです。