豪州戦でのザックの意図を読む
韓国戦への意識
東アジアカップのメンバーに求められているのは、ただ単にアピールすることではない。 すでに固まりつつあるザックジャパンのメンバーに食い込むためには、短期間でザッケローニ監督のスタイルに慣れるのが大前提。それを体現したうえで持ち味を発揮しなければ、レギュラーメンバーへの挑戦権は得られない。 「オーストラリアのバイタルエリアが空くのは事前に分かっていました。サイドもルーズでラッキーでしたね」 カットインからのシュートや徳永悠平との連係で魅せた山田大記が言うように、この日のオーストラリアの守備はあまりに緩く、バイタルエリアにも、サイドにもスペースが生じていた。 こうした場合、それぞれが個人技に走ったとしても、ある程度崩せるものだ。しかし、誰一人として戦術の枠組みから外れるようなアピールに走らなかったところに、彼らが自分たちの立ち位置をよく理解していることが窺えた。 「全員を試合に出せる可能性は多くない」 ザッケローニ監督がそう言ったのは、オーストラリア戦前日のことだった。 ところが、蓋を開けてみれば、初戦の中国戦からスタメンを全員入れ替えてきた。 中国戦にスタメン出場したDFの栗原勇蔵も「誰が出るのか分からなかったけど、これは予想外だった」と驚きを隠せなかったターンオーバー。それを決断したのは前日練習の後だった、とザッケローニ監督は明かす。 「大会前から想定していたわけではなかったが、この大会の一番の目的は、できるだけ多くの選手を試し、見極め、コンディションの良い選手を送り出すことにある。昨日の練習で初戦に出たメンバーのコンディションが悪そうだったので、こういう決断をした」 とはいえ、もしかすると、最終戦の相手である韓国が初戦からメンバーを9人入れ替えて2戦目を戦ったことも、関係しているかもしれない。韓国は休ませた初戦のメンバーを日本戦にぶつけてくるに違いない。となれば、日本もメンバーを入れ替えなければ、コンディション面で不利になる――。ザッケローニ監督がそう読んだとしても、不思議はない。 その一方で、メンバーの身長を考えると、高さが武器のオーストラリアとの一戦に、あえて彼らを起用してきたのではないか、との疑念も湧く。 GK権田修一、DF鈴木大輔、千葉和彦、MF高橋秀人、扇原貴宏、FW大迫勇也、豊田陽平と、センターラインの選手たちがいずれも180センチを超えているのだ。これは、常に高さに不安を抱えてきたザックジャパンにとって、初めてのことである。 真相は明らかにされていないが、いずれにしても、メンバー総入れ替えという決断が奏功したのは間違いない。コンディションの良さとモチベーションの高さが、速い動き出し、鋭い寄せ、的確なサポートといった軽快な動きとして存分に表われていた。