【静岡県知事選】歴代のリーダー経歴は? 官僚、政治家、学者…求める像、時代で変化
26日の投開票が迫る知事選では、官民さまざまな経歴をもつ新人6候補が舌戦を繰り広げている。戦後の公選知事7人の経歴を見ると、前々知事の石川嘉延氏以前は6人全員が官僚か政治家の出身だったのに対し、前知事の川勝平太氏は学者出身だった。県内政治に詳しい識者は「それぞれ特徴が異なり、時代の変化によって県民が求める知事像も変わってきた」と指摘。15年ぶりに選ばれる新知事はどんな人物となるか―。 公選知事を初代から振り返ると、小林武治氏と斎藤寿夫氏は官僚出身。竹山祐太郎氏は農林省技師から衆院議員を経て知事になった。山本敬三郎氏は三井物産社員、県議、参院議員を経験。斉藤滋与史氏は富士市長、衆院議員、建設相、大昭和製紙社長などを歴任した。石川氏は自治省の官僚から知事に。この6人はおおむね自民党など保守勢力の支援を受けて当選した。斎藤氏から石川氏まで5人は県内出身者が続いた。 静岡大の井柳美紀教授(政治学)は「官僚出身者は国とのパイプがあり、着実な行政手腕を持つ。政治家出身者はリーダーシップや発信力が特長。民間出身者には経営感覚や柔軟性、創意工夫の力がある」とそれぞれの持ち味を説明する。例えば戦後と高度成長期には官僚出身者が国との連携力を発揮し、1970年代半ばからの低成長、財政ひっ迫の時代には民間経験のある政治家出身者が困難を乗り越えてきた―とみる。 竹山氏は医大設置、山本氏は東海地震対策、斉藤氏は静岡空港や新東名高速道整備、石川氏は先端健康産業集積(ファルマバレー)プロジェクトなどの重要課題にそれぞれ取り組んだ。 一方、川勝氏は旧民主党政権誕生の前月だった2009年7月、同党推薦で初当選した。県立大の前山亮吉教授(政治学)は「県民は官僚出身で16年続いた石川県政から変化を求めた」とみる。川勝氏は「富国有徳の理想郷ふじのくに」づくりなどを掲げ、県民のプライドを高めた。官僚や政治家出身でなかった川勝氏は独自の発信力と強い個性で4期15年務めたが、今回の知事選で後継指名を受けた候補はいない。前山教授は「川勝県政を脱却するのか継承するのか、県民が次のリーダーにどんな人物を選ぶのか興味深い」と話す。 ■静岡、浜松出身者なし 歴代公選知事7人の出身地をみると、意外なことに静岡市を含む中部や、もう一つの政令市、浜松市の出身者はいない。東部(富士市2人、西伊豆町)が3人、西部(磐田市、掛川市)が2人、県外(長野県、京都府)が2人となっている。今回の知事選6候補の出身地は静岡市と浜松市が各2人、藤枝市と菊川市が各1人で、誰が当選しても出身地初の知事誕生になる。 1974年に静岡市出身の永原稔氏(後に衆院議員)が出馬して僅差で敗れた例などもあるが、静岡、浜松両政令市は知事を輩出していない。前山亮吉県立大教授は「正確な理由は分からないが、中選挙区時代の自民党同士の競争を経て、知事候補に推される人材がたまたま東部や西部の中規模都市から輩出されたのでは」と話す。 井柳美紀静岡大教授は長野県出身の小林武治氏と京都府出身の川勝平太氏の共通点として「地域のしがらみが薄かった分、大胆な政治ができた面もあるかもしれない」との見方を示す。
静岡新聞社