〈お酒はどれだけ飲んでいいの?〉家庭医が伝える病気のリスクを下げるアルコール飲料の飲み方、厚労省ガイドラインを解説する
飲酒量と疾患発症リスクの難しい関係
厚生労働省のガイドラインでは、純アルコール量でこれ以上の飲酒をすると発症等のリスクが上がると考えられるものが、下記のように示されている(「0グラム」は、少しでも飲酒するとリスクが上がるという意味)。参考にした研究結果は、多くが10年以上前に発表されたものであるが、日本人を対象としている。 脳卒中(出血性)は、男性で1日20グラム、女性で0グラム 脳卒中(脳梗塞)は、男性で1日40グラム、女性で1日11グラム 高血圧は、男女とも0グラム 胃がんは、男性で0グラム、女性で1日20グラム 肺がん(喫煙者)は、男性で1日40グラム、女性はデータなし 肺がん(非喫煙者)は、男性は関連なし、女性はデータなし 大腸がんは、男女とも1日20グラム 食道がんは、男性で0グラム、女性はデータなし 肝がんは、男性で1日60グラム、女性で1日20グラム 前立腺がん(進行がん)は、男性で1日20グラム、女性はデータなし 乳がんは、男性はデータなし、女性は1日14グラム 国内では、「生活習慣病のリスクを高める量(1日当たりの純アルコール摂取量が男性40グラム以上、女性20グラム以上)を飲酒している者の割合を男性13.0%、女性6.4%まで減少させること」が「アルコール健康障害対策推進基本計画」の第2期計画の重点目標となっており、今年度開始予定の国民健康づくり対策「健康日本21(第三次)」では、その男女合わせた全体の目標値が10%に設定されている。 「疾患ごとに数値が出ていても具体的にどうしたら良いか分かりにくいし、まとめて目標値を設定されても何かピンと来ないわ」とY.I.さん。 「脳梗塞にはなりたくないから制限は1日40グラムまでにして、大腸がんになるリスクについては目をつぶろうってのもおかしい気がします」とM.I.さん。 「多くの研究が対象疾患一つだけを持った人のデータを集めたものだからこうした結果になるんです。実際には複数の疾患を持っている人が多いですが、その組み合わせは多様になるため、研究するのが困難になるんです。それから、国民など集団としての目標設定(ポピュレーションアプローチと呼びます)なのか、リスクの異なる個人についての目標設定なのかの違いがあります。このガイドラインはポピュレーションアプローチとしての目標設定が前面に出ていますね。だから、Y.I.さんとM.I.さんのように、こうして個人の目標設定について家庭医と相談してもらうことは大事です」