【イベントレポート】「ぼくのお日さま」越山敬達・中西希亜良を池松壮亮が称賛「人生を役に乗せている」
映画「ぼくのお日さま」の記者会見が本日7月1日に東京・日本外国特派員協会で行われ、キャストの越山敬達、中西希亜良、池松壮亮、監督の奥山大史が出席した。 【画像】映画「ぼくのお日さま」記者会見に出席した池松壮亮 雪の降る街を舞台とする本作では、吃音を持つホッケー少年タクヤ、フィギュアスケートを学ぶ少女さくら、元フィギュアスケート選手でさくらのコーチである荒川という3人の視点から物語が紡がれる。越山がタクヤ、中西がさくら、池松が荒川を演じた。 スケートをしながらの撮影について問われた越山は、湖に張った氷上での場面に触れ「たくさん転びましたね。右ひざを3回強打して、痛すぎて泣いちゃいました（笑）」と吐露。中西も同じシーンを挙げ、「自然が作り上げたので、でこぼこしているんです。長いことスケートをやっていましたが、あそこまでとは予想していなくてびっくりしました。でも撮影を通して楽しい時間が多かったので、あのシーンが難しかったことを忘れていましたね」と笑顔で回想する。 出席者のうち唯一スケートの経験がなかった池松は「先に始めていた2人がすでに上手でしたし、奥山さんもカメラを持ちながら滑っていました。なので僕は置いていかれないように必死に付いて行こうと。湖のシーンは4人で2日間ひたすら遊ぶように滑っていて、あの光景は一生忘れないな、と」としみじみ。「カメラマンとしても新鮮な時間でしたね」と口にする奥山は、中西に目線を送りつつ彼女が1人で滑るシーンを挙げ「繰り返しテイクを重ねていて、後半にジャンプをするプログラムなので疲れていたと思うんですが『もう1回挑戦したいです』と。映画への熱量が高まっていることを感じられてうれしかったです」とたたえた。 本作で初の映画出演を果たした中西は、撮影の印象を聞かれると「正しいやり方を理解していたわけではなかったので、最初は緊張しました。今回はスケートの経験を生かせたので、演技的に力足らずな部分があってもスケートの技術で補うことができました」と述懐しつつ「でも裏を返せばスケートの経験があったからこそあの役をいただけたとも思うので、まだまだ努力しなければと思います」とも言葉を紡いだ。 即興で演じているような自然な芝居が魅力でもある本作。池松は「脚本がシンプルで短く、余白が残るものだった」と前置きしつつ「なので、みんなで物語を作っていくことで余白を埋めていきたいと思って。“役人生”にとってのスペースをもらった気分ですね」とコメントしつつ、越山・中西は脚本を事前に渡されずに芝居をしていたことを明かす。その点について越山は「自然体で演じるということに着目したら、今回が一番やりやすい方法でした」と言及。加えて中西は「固められた“キャラ”を演じているというよりも、自分自身の姿がそこにあったような感覚。だからパニックを起こさずに済んで、演技が未経験でもいいアプローチで臨むことができました」と述べた。 池松は2人との撮影について質問されると「人生を役に乗せている2人が本当に魅力的。彼らに引っ張られながら、どう彼らを物語に没頭させられるかを考えていて。コーチ役として物語を超えてサポートできたらという思いでした」と振り返った。 荒川はコーチだが、典型的な“熱血漢”とは異なる人物。奥山は彼のキャラクター造形について、自らのスケート経験を話しつつ「スケートはほかのスポーツと比べても（選手）生命が短いほうで、若い人でも現役を引退して就職・進学をする人が多いんです」と説明。「そんな人たちがしばらくしてスケートリンクに遊びに来ることもありました。彼らには夢をあきらめた人たちが持つ『次に向かおう』という思いがありつつ、一方で自分ががんばっていた場所に戻って来ると少し思うところがあったりもする。そんな人たちには独特の艶やかさ、色っぽさがあって。同じ雰囲気を池松さんからも感じたんです」と感慨深い様子を見せる。 一方で池松は「熱血コーチにならなかったのは、僕のスケートの技術が最悪だったから（笑）」と冗談を交えつつ「荒川は非常に複雑な思いを抱えて生きてきた人。後悔やあきらめの感情が漂っている人物ですが、2人と出会うことで人生が前向きになっていく」と分析。さらに「タクヤは言いたいことがうまく言えない子供ですが、荒川は言いたいことが言えなかった大人。そんな自分が彼をどう導いてあげられるのか、葛藤しながら子供たちと対峙したかったし、どういう態度でいてあげられるかが重要だと思いました」とも語った。 続けて荒川と、若葉竜也扮する彼の恋人・五十嵐の関係について質問が飛ぶと、奥山は「荒川にはどんな背景があるのかなと思ったときに、自分が観たいものを書き始めたら自然とそういう形になりました」「多様性やダイバーシティと言われる世の中ですが、1歩目は認めること、肯定すること。『みんな違ってみんないい』という言葉もありますが、“どんな存在も肯定してくれる存在がある”。そんな部分を映画にしたいと思いました」と伝えた。 「ぼくのお日さま」は9月6日から8日まで東京・テアトル新宿、TOHOシネマズ シャンテで先行公開され、9月13日より全国のスクリーンにかけられる。 (c) 2024「ぼくのお日さま」製作委員会／COMME DES CINÉMAS
