死ぬまでにお金を上手に使い切る 元メガバンク支店長が教える「お金」「健康」「時間」の組み合わせ方
――富裕層に限らず、この考え方は共通しますか。 将来の医療費や介護費用がどのくらいになるか、と不安に感じるのは、みんな一緒です。考えていたらきりがありません。今は医療も高度になっていて、命を長らえることができるようになりました。自費診療や個室費用などに必要以上のお金を何百万円も何年も払ってまで一日でも長く生きたいと思いますか。自分自身は50代、60代の旅行適齢期に旅行を我慢してお金を貯めるなんてナンセンスだと思っています。 ――でも将来何があるかわかりません。 その発想で人生を組み立てちゃいけないんです。人生を楽しく豊かに充実して過ごす。お金の使い方にせよ、時間の使い方にせよ、ここを主軸にして考えるべきだと考えています。人生の目的をしっかり考えて、捨てるべきものは捨てる。たとえば、延命治療はしない。そう断言する。それだけでも長寿リスクの不安が和らぐはずです。 ■日々の生活に潤いを与える ――それでも不安に感じる人がいるかもしれません。 おそらく、それほどまでに将来が不安なのは自分の資産を把握していないからです。毎月入ってくる金額しか見ていないから不安になる。この連載で何度も話していますが、自分の資産の棚卸しをして、見える化しましょう。「意外と私、大丈夫かも」って思う人が多いと思います。それでもまだ長生きリスクが不安であれば、保険金を終身で受け取れる個人年金保険に入ることなどを検討すればいい。そのうえで、やりたいことをやって日々の生活に潤いを与えるお金の使い方をするんです。
――確かに「先送り」しているうちに病気になったら、何のためにお金を貯めていたのかわかりませんね。 「お金」と「健康」と「時間」、この3つをどううまく組み合わせるか。たとえば、サッカーをしたいとか、スキューバダイビングをしたいとか、世界一周旅行をしたいとか。こうしたことは70歳を過ぎたらかなりきつい。感性豊かな若い頃に行ったほうが良い。そのためにも、自分がやりたいことを10でも30でもリストアップして「今しかできないこと」から先送りせずに実行する。この生き方、このお金の使い方が、人生を豊かにしてくれます。 子どものためにお金を使うのも、生きているうちにすることです。お金が必要になるのは教育費用や住宅の購入などを考える30代、40代前後です。その時期にお金を渡してあげましょう。死んでから渡したってその頃の子どもはきっとそれなりに貯蓄があって、喜び半分、相続税の支払いの疲弊半分ですよ(笑)。 ■人生を楽しみましょう ――よく「何歳に死ぬとわかっていたら、お金をもっとたくさん使えるのに」と言う人がいますね。 本当にもったいない。60歳を過ぎてもまだ旅行を我慢している方は航空会社のシニア割などを上手に使って、旅行を積極的にしてほしい。もう一度言いますね。もっと、人生を楽しみましょう。せっかくあなたが貯めてきたお金なんですから。 次回のテーマは、「日本への投資のススメ」です。 菅井敏之(すがい・としゆき)/1960年、山形県生まれ。学習院大学卒業後に、三井銀行(現・三井住友銀行)に入行。東京と横浜で支店長を務め、25年間銀行マンとして働く。48歳で早期退職。現在は10棟のアパート経営で年間7000万円の不動産収入を得ている。また、人気講師として全国で講演やセミナーを行っている。現在は帝国ホテル内でお金に関する相談も受けている。著書に『お金が貯まるのは、どっち!?』(アスコム)など。お金の専門家・菅井敏之公式サイト「お金が貯まるのは、どっち!?」(https://www.toshiyukisugai.jp/)
大崎百紀