坂本真綾×河本啓佑が考える、吹き替え作品の醍醐味 「制約があるからこそ面白い」
坂本真綾&河本啓佑は海外作品をどのように観ている?
ーープライベートで映像を観る時は、字幕と吹き替え、どっちで観てますか? 河本:吹き替えでしか観ないですね。僕はもう声優が好きで声優になったので。 坂本:私は何を観るかにもよるんですけど、基本は字幕かな。いや……(同業者の) 人の顔が浮かんできちゃって(笑)。 河本:ははっ。確かにそれはあります。 坂本:ちょっと職業病なんですよね。字幕で観てても、「この吹き替えは誰がやってるんだろう?」「私、これできるかな?」とか、勝手に脳内でキャスティングを始めちゃうんですよ。 ーーお2人が普段どんな海外作品を観るのか気になります。 河本:僕、韓国ドラマの復讐ものをめちゃくちゃ観るんです。主人公が最初はひどくいじめられてるけど、復讐を通して全員に仕返しするみたいな。ちょっとスカッとする感じが好きなんです。例えば、韓国ドラマ『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』『マイネーム:偽りと復讐』とか。あと『マスクガール』とか。『模倣犯』みたいなちょっとグロい感じのものとか、殺人鬼が出てくるようなものも好きで、よく観ます。 坂本:最近だと、自分が出演してるものなんですけど、『三体』っていう中国SFドラマが面白くて。最初は難しいなと思ってたんだけど、セカンドシーズンがこんなに待ち遠しいのも久しぶりで、続きが気になって仕方ないんです。ドラマは原作とはかなり変わってるんです。それこそ、原作ファンは違和感を感じるかもしれないぐらい。でも、その大胆さが私は逆にいいなって思ってて。スケールも大きい作品なんですけど、「続編が早く放送されないかな」と楽しみにしてます。 ーー一方で演じる側として、自分のキャリアの中で印象深い吹き替え作品はありますか? 河本:一つは『屋根部屋のプリンス』。吹き替えでは、浪川大輔さんが主演でやられてた韓国ドラマです。そこで3人組の1人をやらせてもらって、シリーズを通して主役と掛け合いができる機会があったんです。この作品は、家で練習してる時とは全然違って、現場で先輩方に引っ張り上げてもらってるような感覚がありました。 ーー他の作品でも「先輩に引っ張ってもらった」感覚を強く感じた作品はありますか? 河本:いろんな作品が思い浮かびますけど、同じように『蒼のピアニスト』で、日野聡さんとライバルみたいな立場で掛け合いをさせてもらった経験も大きかったです。この2つの作品は特に、自分の中でお芝居に対するイメージが変わったというか。先輩たちの姿を観て、「自分ももっと表現の幅を広げていきたい」って思いが生まれました。 坂本:私は、中学生になったばかりくらいのころに『マイ・ガール』って作品に出演したんです。マコーレー・カルキンくんと、アンナ・クラムスキーさんがメインの作品の吹き替えです。今思えば、相手役は林勇くんでした。当時2人とも子役でした。 ーー坂本さんの中では、どういった部分で印象深い作品だったのでしょうか? 坂本:この作品では、幼馴染の男の子が亡くなっちゃう悲しいお話で、お葬式で泣きながら「起きて」っていうシーンがあったんですよ。そのとき、マイクの前に立ってるという感覚が全部なくなって、その女の子の気持ちと同化して、ものすごい集中力を感じたんです。初めて役に没頭するという感覚を味わいました。大人になってからは、演じる役にあんまり没入しすぎるのはよくないと思うこともあるんですけど、その人物が見てる視点と同じ視点になるということは大事にしたいなと思っています。この作品で、そういった感覚を初めて肌で感じたんですよね。 ーー忘れられない収録だったんですね。 坂本:そうなんです。本当に実りの多い収録で、今でもよく覚えてるんですよ。演出家の方が子供だからといって甘くせず、厳しく指導してくださったことも良かったです。プレッシャーも感じつつ、そこで学んだことが後々役立つこともたくさんあって。