【朝日杯FS】単なる〝ネタ馬〟じゃないニタモノドウシ 偉大なる祖父ディープに似てきた!
[GⅠ朝日杯フューチュリティステークス=2024年12月15日(日曜)2歳、京都競馬場・芝外1600メートル] 2歳マイル王の座を争う第76回朝日杯FS(15日=京都芝外1600メートル)には、サウジアラビアRC覇者アルテヴェローチェ、京王杯2歳S覇者パンジャタワーらの重賞ウイナーをはじめ、期待の若駒が勢揃い。異彩を放つのが、名手ムーアを鞍上に迎えるニタモノドウシだ。メンバー中1頭だけ中央場所での出走歴がない“裏街道”を歩んできたが、ユニークな馬名は単なる“ネタ馬”にあらず。成長するにつれ似てきたのは…。名付け親がその正体を明かした。 裏街道――。辞書には「公式ではない、わきの道」「まっとうでない生き方」とあり、競馬ではローカル開催中心のローテーションを意味する。素質馬がズラリと揃う中央場所の新馬戦に比べればレベルは…と疑問符をつけたくなるところだが、この馬には当てはまるだろうか。 初戦は福島の芝千二。菅原明を背に出遅れ、序盤で大きく離される。それでも大外を早めに回し余力十分に1分10秒5で突き抜けた。開幕週とはいえ勝ち時計は同開催でトップタイ。レース上がりを1秒2も上回った。次戦は札幌のクローバー賞(芝1500メートル)で川田を背にレコード勝ち。ここも大外を回して余力十分に2馬身突き抜けた。 ただ、クローバー賞で2着だったミリオンローズはアルテミスSで9着。前年のクローバー賞覇者・コスモディナーは阪神JFで9着だった。加えて1週前追いは美浦南ウッドでデコラシオン(古馬3勝クラス)相手に脚色劣勢の半馬身遅れ。レースレベル、臨戦過程、中間の状態と強調材料には乏しいものがある。 それでも厩舎をのぞいてみると…。臨戦過程については、休み明けを1回使う案もあったが、精神面から本番一本に絞り単走主体で仕上げる狙いがあるという。 1週前追い切りについても担当の冨岡助手は「ほぼ出来上がっているし、一番動く相手ですから。下が荒れる時間帯で輸送も考慮し無理しませんでした」と説明。高木調教師も「あまりやると頭が出来上がるので。ここまで順調ですよ」と語る。狙い通りなら追い切りで評価を下げる必要はない。むしろ狙い目か。 同馬を幼駒から知る嶋田賢オーナーの代理人・飯倉健史マネジャーに聞いてみると…。 「ずっとこの血統を買っており、三嶋牧場さんがオーナーの2頭目のGⅠ馬であるディーマジェスティ(皐月賞)をつけてくれました。育成牧場にいるころ、脚が短く寸詰まりの体形が父にそっくりで、私が命名しました」 体形から適性はマイルと感じながらも、馬房の関係で福島で下ろすことになって初戦は千二に。 「入厩当初、コロンとしていた体形が1本やっただけで締まり、競走馬らしいフォルムになりました。乗った瞬間に『走るかも』と感じましたね。環境に敏感ですがパドックで入れ込まず、競馬が上手です。賢くて手がかかりません」(冨岡助手) 夏は休ませる予定だったものの、牧場であまりに行きっぷりが良く好時計を出すため、牧場長が「出走すれば勝ち負け」と進言。クローバー賞はまさに確勝の一鞍だった。 「走り方や跳びが、父より祖父のディープインパクトっぽくなりました。輸送は北海道との間で経験しており問題ないでしょう。当週にライアン(ムーア)が感触を確かめてくれますし、特に不安要素はありません。ここが試金石になるはずです」(飯倉氏) ニタモノドウシの馬名の意味は「似た者同士。父親に似ているので」とJRAに登録されている。しかし、現時点での“そっくり対象”が、祖父のディープインパクトにグレードアップしているというのだ。 日本競馬界の至宝がGⅠを3勝した淀の舞台。偉大な祖父に近づきつつあるその孫が、最高のパフォーマンスを見せてくれるに違いない。
垰野 忠彦