「私たちは“海賊船”に乗った仲間だよ」自らの子育てを終え“住み込みの里親”になった女性
子供たちと結成した「海賊団」
これまで2週連続で育親のインタビューをお伝えしてきました。田原正則さん(44歳)と松島智子さん(36歳)はともに、社会的養護の施設での勤務経験がありましたが、眞邉さんは初めての経験です。それでも眞邉さんは、子供たちにこんなことを持ちかけました。 眞邉:私は「カンちゃん」と呼ばれているんですね。最初に「ここは船だから、カンちゃんが船長やけん」て。「あなたたちがもうこの港で降りたいですというところまでは、みんなで一緒に協力して漕いでいくとよ」という話をしています。 眞邉:「船だよ」とか言ったら、ワンピースとかを見ながら「海賊がいいな」とかって言って、海賊団に。(壁に張った紙を指して)あそこに「海賊団」と書いているんですけど、お約束を。家のルールを決めようと思った時に、みんなで話し合ったら、「仲良くする」「約束を守る」「仕事をする」。「じゃあ仕事って何?」って言ったら、「カレンダーを毎日めくる」、「カーテンを開ける」してないですけどね。「カンちゃんは何がいいかな?」て言ったら、お花の世話って。「そうね、花の世話、頑張ります」と。花壇があるので。 神戸:海賊団、結成! 眞邉:最初に来た時、あの子たちにも言ったんですけど、「一緒に住んだら家族やん。離れてても家族やん。私の娘も家族、お姉ちゃんやん」て言ったら、「え、そうなの?」とすごい喜んでて。「離れていても、家族は家族。一緒に住んだら、もう家族や」というふうに話しています。
爆発する「大人への怒り」
家族のあり方みたいなものを小さな子供たちに分からせていこうというための「海賊団」結成だったんだそうです。しかし、「海賊団」に入った子供たちはまだ10歳にも満たない幼さで、最初はすごく大変で、眞邉さんは相当苦しんだそうです。 眞邉:1年目は、もうぐちゃぐちゃでした。ご飯を投げ散らかしてぐちゃぐちゃになったりとか……もう、それはひどかったですね。なんでそういうことするのかが分からない。どんどん自分が壊れていく、というか。それを支えてもらったのは、ファミリー・チーム・ミーティングだったり、あと両隣の育親さんの存在ですね。 眞邉:お隣さんが「大人に対する怒りをぶつけているような気がする」と。「ああ、そうかもしれない」と。今までの大人に対する怒りを、全部私にぶつけている。喧嘩して捕まえようとするとかみつかれて、もう全身アザだらけだったんですね。かんだり蹴ったり。でも、ほんと物を壊さなくはなりましたけど。 眞邉:もう本当にミスが多いんです、私。なので「カンちゃん、こうなっとるよ」と教えてくれるぐらいに。お互いに多分「扱い方」を勉強中、みたいな。私ももちろん、あの子たちにどう関わろうというのはまだまだ勉強中ではあるんですけど、彼らの方が賢いので、先に私の扱い方をわかってきているような気もします。 人と人の関係はどうあるのか、手探りみたいですね。ただそれでも互いに距離感を考えながら、成長もしてきます。眞邉さんは粘り強いなと思いました。