年間35億羽の鳥を米国で死なせている「見えない殺し屋」とは、世界でははるかに多いはず
窓に木々や空が映れば鳥はぶつかる
過去半世紀にわたり鳥の窓ガラスへの衝突を研究してきたクレム氏は、この分野の第一人者で、研究をまとめた著書『Solid Air: Invisible Killer - Saving Billions of Birds from Windows(固い空気:見えない殺し屋――数十億羽の鳥たちを窓から救う)』もある。 クレム氏によると、世界中の窓の99%は光を反射するという。「完全に透明な窓ガラスでも、室内が暗いときには、外側は鏡のようになります」。そして、窓の表面に木々や空が映っていると、鳥たちはそこにものがあるとは思わずに飛び続け、激突してしまう。 「窓の危険性を強調するのは良いことです」と、クレム氏の研究を評価するのは、米カーネギー自然史博物館パウダーミル自然保護区の鳥類研究コーディネーター主任であるルーク・デグルーテ氏だ。氏は、衝突の半数が痕跡を残さないという観察結果も賞賛している。氏もこうした状況を何度か目撃しているが、科学的な文献で認められたことはないからだ。 ただしデグルーテ氏は、この研究の計算については注意を促している。例えば、野生動物リハビリ施設の統計データは専門家による検証を受けていない。だからといってデータが正しくないということにはならないが、デグルーテ氏は自身の調査からリハビリの成功率には大きなばらつきがあることを知っている。 「私のところのリハビリ担当者の1人は、90%以上という驚異的な回復率を誇っています」と氏は言う。「70%という死亡率は高いと思います」
窓ガラスから鳥たちを守る簡単な方法とは
良いニュースもある。窓ガラスへの鳥の衝突は簡単に防げるのだ。 クレム氏もデグルーテ氏も、窓ガラスに貼って鳥に気づかれやすくするフィルムやコーティング、パターン、ステッカーなどの新製品をテストする実験を行っている。 スポーツスタジアムや高層ビルへの鳥の衝突を防ぐには高度な加工と政治的な意志が必要かもしれないが、鳥に優しい消費者が自宅に設置できる安価な製品はたくさんある。 例えば、窓に紐をたらしたり、窓ガラスに模様つきの透明フィルムを貼ったりすれば、窓の存在を鳥に気づかせ、衝突を防ぐことができる。 「その気になれば、明日にでも鳥たちを救えます」とクレム氏は言う。
文=Jason Bittel/訳=三枝小夜子