日本で暮らして感じる「罪悪感」 ウクライナ人が同僚に知って欲しいこと ニュースだけでは分からない“リアル”①
■聞く側の躊躇 「あなたには分からないと言われたら…」
永井音羽さんは、ヴィクトリアさんの話に思い当たる経験があった。ウクライナからの留学生の歓迎会を開いた際のことだ。 「その留学生の友達が亡くなったっていう一報が入って、(留学生が)途中で泣いて抜けちゃったっていうことがありました。その留学生は、『自分がこんなに幸せな空間にいていいのか』ということと、『友達が亡くなった』っていうことの整理がつかないのが重なって、部屋から出て来られなくなっちゃって…」 永井さんは、その時に話を聞いてあげたいと思う一方で、「あなたには分からない」と言われてしまうかもしれないと思って、躊躇してしまったという。 「あの時に戻れて、もう一回話を聞ければよかったなって思いました」
■ウクライナ国内でも意識の差「何が正しくて何が許されて…」
ヴィクトリアさんは、自国に残っているウクライナ人同士の中でも葛藤が生じていると明かす。 「戦争が始まったら、ウクライナ国内でも色々な問題が起きました」 戦線の近くに住む人と、比較的に日常生活が維持できている人との間で、意識の差が生じているという。 「なぜかというと人によって経験がすごく違います。戦争中は誰もが、いろんな経験を持っています。できれば普通の生活を続けたいと思っていますけれども、この生活を続けることができない人も非常に多くいます」 「今は誰にとっても困難です。戦時中に何をすることが正しくて、何が許されて、何がそうではないか…。きっとある程度、そういうこともあります。だけど、この国が敵に対する憎しみにだけでなく、国内でも争いに直面しているのは、私にとってもつらいことです」
■戦争が始まった後「いいこともありました」
川路芽依さんは、ニュースで見ているのはあくまでも国と国との戦争でしかないが、「一つの国の中でもいろんな葛藤があって、複雑な気持ちで皆さん生活されている」現実を改めて理解できたと話す。 ウクライナに住む友人はヴィクトリアさんに「悪いニュースに慣れてしまい、心理的に冷たくなったという気持ちがある。急に大人になったという感じがある」と漏らしたという。ヴィクトリアさんはその一方で、こう述べて笑顔を見せた。